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実務担当者向けコラム 第6回 労働安全衛生

粉じん則における局所排気装置とは?

粉じん作業で確認すべき発生源対策と管理ポイント

掲載:2026年5月6日 / シリーズ:製造業のためのEHS法令用語ノート

粉じんが発生する作業では、局所排気装置の設置が必要だと考えられがちです。しかし、粉じん障害防止規則(以下「粉じん則」)では、すべての粉じん作業に対して一律に局所排気装置を義務付けているわけではありません。

まず「粉じん作業」に該当するかどうかを確認し、次に「特定粉じん発生源」に該当するかどうかを確認する必要があります。そのうえで、粉じん則第4条に基づき、発生源の区分ごとに求められる措置を確認することが重要です。第4条の区分によっては、局所排気装置ではなく、湿式型削岩機、湿潤化、密閉設備、またはプッシュプル型換気装置が示されているケースもあります。

また、局所排気装置を設置することで対応が完了するわけではなく、設置後の稼働管理、点検、定期自主検査、記録保存、作業環境測定、じん肺健康診断との関係も継続的に確認する必要があります。

個別確認が必要です

粉じん則の適用判断は、対象物質の種類、設備の構造、作業の方法、取扱数量、屋内外の区別、所轄行政機関の判断等によって異なります。本記事は一般的な整理を目的としており、個別の作業や設備への法令適用を断定するものではありません。

この記事の結論

  • 局所排気装置は、粉じん則における発生源対策の一つであり、すべての粉じん作業で一律に必要なわけではない。
  • 特定粉じん発生源に該当する場合、粉じん則第4条の区分ごとに求められる措置を確認する必要がある。
  • 第4条の区分によって、密閉設備、湿潤化、プッシュプル型換気装置、湿式型削岩機など、局所排気装置以外の措置が示されている場合がある。
  • 局所排気装置を設置しただけでは対応が終わらない。稼働管理、点検、定期自主検査、記録保存、作業環境測定、じん肺健康診断との関係も含めて確認が必要。
  • 特定粉じん発生源に該当しない粉じん作業であっても、屋内作業場では全体換気装置による換気またはこれと同等以上の措置(粉じん則第5条)が求められる。

粉じん則でまず確認すべき3つの言葉

粉じん則を読む際に、まず整理しておくべき用語が3つあります。これらを混同すると、必要な措置の範囲を誤認する可能性があります。

用語 根拠 意味 局所排気装置との関係 現場での確認ポイント
粉じん作業 粉じん則第2条第1項第1号、別表第1 別表第1に掲げられた作業(鉱物等の掘削、破砕、研磨、溶射など一定の作業)。「粉じんが発生する作業全般」ではなく、別表第1で列挙された作業が対象。 粉じん作業に該当することが、粉じん則上の各種義務(第4条、第5条等)の出発点となる。 実際に行っている作業が別表第1のどの号に該当するか確認する。作業名だけでなく、対象物質・設備・作業方法を照合する。
特定粉じん作業 粉じん則第2条第1項第3号 粉じん作業のうち、その粉じん発生源が特定粉じん発生源であるもの。別表第1に掲げる粉じん作業に該当し、かつ、その作業に係る粉じん発生源が別表第2に掲げる特定粉じん発生源に該当する場合に、特定粉じん作業となる。 特定粉じん作業に該当する場合、粉じん則第4条に基づき、当該特定粉じん発生源の区分ごとに、局所排気装置、密閉設備、湿潤化、プッシュプル型換気装置などの措置を確認する必要がある。ただし、特定粉じん作業であれば必ず局所排気装置が必要、という意味ではない。 まず別表第1の粉じん作業に該当するかを確認し、次に当該作業の粉じん発生源が別表第2の特定粉じん発生源に該当するかを確認する。作業名だけで判断せず、対象物、設備、作業方法、屋内外の別を確認する。
特定粉じん発生源 粉じん則第2条第1項第2号、別表第2 別表第2に掲げる箇所(特定の設備・作業箇所)。粉じん則第4条の局所排気装置等の設置義務は、この「特定粉じん発生源」を中心に定められている。 特定粉じん発生源に該当する場合、第4条に基づき区分ごとの措置を確認する必要がある。ただし、局所排気装置が唯一の選択肢とは限らない。 別表第2の各号と現場の設備・作業箇所を照合する。設備の形式(固定式・移動式)、対象物質(鉱物等・炭素原料等・金属等)も確認する。

整理のポイント

「粉じんが出る作業=局所排気装置が必要」ではありません。まず「粉じん作業」(別表第1)に該当するか、次に「特定粉じん発生源」(別表第2)に該当するかを確認し、そのうえで第4条の区分ごとに必要な措置を確認する、という順序が重要です。

局所排気装置が問題になるのはどの場面か

局所排気装置が主に問題になるのは、粉じん作業のうち特定粉じん発生源(別表第2)に該当する作業箇所についてです。粉じん則第4条は、これらの特定粉じん発生源に対して、発生源の区分ごとに必要な措置を定めています。

ただし、特定粉じん発生源に該当しても、必ず局所排気装置が必要とは限りません。第4条の表では、区分ごとに求められる措置が異なっており、湿式型削岩機、湿潤化、密閉設備、プッシュプル型換気装置が示されている区分もあります。また、第4条には「同等以上の措置」という考え方があることも踏まえておく必要があります。

局所排気装置が特に問題になりやすいのは、屋内の粉じん発生箇所(研磨、ばり取り、袋詰め、混合・混入、型ばらし、金属溶射など)で、第4条の表において局所排気装置またはプッシュプル型換気装置が選択肢として示されているケースです。次のセクションで区分ごとに整理します。

粉じん則第4条では、発生源ごとに求められる措置が違う

粉じん則第4条は、特定粉じん発生源の区分ごとに、事業者が講ずべき措置を定めています。以下の表は、第4条の各号(一~十)の対応関係を整理したものです。

以下の表は、粉じん則第4条の表に列挙された措置を整理したものです。「第4条の表上は○○が示されています」という表現で整理しており、個別作業への適用を断定するものではありません。第4条には「同等以上の措置」に関する規定もあることを踏まえ、個別の判断は所轄行政機関または専門家に確認してください。
区分 対応する別表第2の号 対象となる特定粉じん発生源の概要 第4条の表に列挙された措置 局所排気装置が選択肢に含まれるか 実務上の確認ポイント
別表第2第1号の一部(衝撃式削岩機使用箇所) 坑内の鉱物等の動力掘削で、衝撃式削岩機を用いる箇所 湿式型削岩機の使用 含まれない 湿式型削岩機の使用記録、給水装置の整備状況を確認する。
別表第2第1号・第3号・第4号(坑内の掘削・ずり積み等) 坑内の動力掘削箇所、ずり積機やコンベヤー等による鉱物等の積み卸し箇所 湿潤化 含まれない 湿潤化のための設備・水の使用記録を確認する。
別表第2第2号(動力による破砕・粉砕・ふるい分け) 鉱物等を動力により破砕し、粉砕し、またはふるい分けする箇所 密閉設備の設置、または湿潤化 含まれない 密閉設備の構造・気密性、湿潤化の方法を確認する。
別表第2第5号・第7号・第13号(屋内の岩石・鉱物の加工等) 屋内の動力による岩石・鉱物の裁断、彫り、仕上げ等の箇所 局所排気装置の設置、プッシュプル型換気装置の設置、または湿潤化 含まれる 採用している措置の種別、フードの位置・囲い込み、稼働記録を確認する。
別表第2第6号・第8号・第14号(研磨材吹き付け・アルミ箔破砕・砂再生等) 屋内の研磨材の吹き付け箇所、アルミ箔の動力による破砕等の箇所、砂の再生箇所 密閉設備の設置、または局所排気装置の設置 含まれる 密閉設備か局所排気装置かの選択理由、設備の設置状況・稼働状況を確認する。
別表第2第7号の一部(回転体機械による研磨・ばり取り・裁断) 屋内の回転体機械を用いた岩石・鉱物・金属の研磨、ばり取り、金属の裁断箇所 局所排気装置の設置、または湿潤化 含まれる 固定式グラインダー(両頭グラインダーなど)のフード設置状況、湿潤化の実施記録を確認する。粉じん則別表第2では、手持式または可搬式動力工具によるものが除かれる場合があるため、固定式設備か手持式工具かを現場で確認する。
別表第2第8号の一部(屋内の動力による破砕・粉砕・ふるい分け) 屋内の鉱物等・炭素原料等の動力による破砕、粉砕、またはふるい分けの箇所 密閉設備の設置、局所排気装置の設置、または湿潤化 含まれる 対象物質が鉱物等・炭素原料等に該当するか確認のうえ、採用措置の適切性を確認する。
別表第2第9号・第12号(袋詰め・原料の動力成形) 屋内の粉状鉱石・セメント等の袋詰め箇所、耐火レンガ等の原料の動力成形箇所 局所排気装置の設置、またはプッシュプル型換気装置の設置 含まれる 袋詰め設備周辺のフード位置・吸引状態、プッシュプル型の場合は気流の方向・風速を確認する。
別表第2第10号・第11号(混合・混入・散布・原料混合等) 屋内の粉状鉱石・炭素原料等の混合、混入、散布、または原料混合等の箇所 密閉設備の設置、局所排気装置の設置、プッシュプル型換気装置の設置、または湿潤化 含まれる 対象物質の種類、採用措置の種別と稼働状況、作業方法との整合性を確認する。
別表第2第14号・第15号(型ばらし・砂混練・鋳ばり取り・金属溶射) 屋内の型ばらし装置、動力による砂混練、鋳物のばり取り、金属溶射の箇所 密閉設備の設置、局所排気装置の設置、またはプッシュプル型換気装置の設置 含まれる 鋳造工場・溶射設備のフード設置状況、作業中の稼働状況、除じん装置の有無を確認する。
上記は粉じん則第4条の構造を整理したものです。別表第2の各号が具体的にどの作業箇所に該当するかは、対象物質、設備の種類・規模、作業方法によって判断が必要です。最新の法令原典(e-Gov法令検索等)で条文を確認してください。

対象物の確認も重要です|「鉱物等」「鉱石」「粉状」の見方

粉じん則の適用判断では、作業名だけでなく、取り扱っている対象物が何かを確認することが重要です。特に「鉱物等」「鉱石」「粉状」「炭素を主成分とする原料」などの用語は、作業の該当性や特定粉じん発生源への該当性に影響します。

じん肺法施行規則の改正に関連した通達等では、用語について以下のように示されています。ただし、これはあくまで通達等における示し方であり、個別事案への適用は所轄行政機関または専門家に確認することが望まれます。

用語 確認すべき意味 実務上の注意点
鉱物等 粉じん則では、別表第1・別表第2の中で「土石、岩石又は鉱物」を対象とする作業・発生源が多く規定されています。本記事では、これらをまとめて「鉱物等」と表現しています。実際の該当性は、別表第1・別表第2の各号の文言に沿って確認する必要があります。 「鉱物等」に人工的に合成された粉体や有機系材料が含まれるかどうかは、対象物の性状・由来・組成を確認したうえで個別に判断する。「鉱物」という言葉が入っていても自動的に該当するわけではなく、また含まれていないからといって必ず除外されるわけでもない。
鉱石 通達では、天然に産する土石または岩石に限られ、人工的に合成されたものは含まないとされています。 人工的に製造・合成された原料(人工砥粒など)は「鉱石」に該当しない場合がある。ただし、他の分類に当たる可能性もあるため、対象物の特定は慎重に行う。
粉状 通達では、砂状よりも粒子の細かい状態で、粒径がおおむね1mm以下の粒子が主体である状態とされています。 「粉状鉱石」「粉状の○○」など、別表第2の各号に「粉状」という条件が付いている場合は、取り扱う材料の粒径を確認する必要がある。
炭素原料等 炭素を主成分とする原料として、カーボンブラック、黒鉛、石炭、コークス、活性炭等が例示されています。 炭素系素材を扱う工場では、対象物が「炭素を主成分とする原料」に該当するかを確認する。該当する場合、別表第2の関連する号との照合が必要になる。
樹脂、人工的に合成された粉体、添加剤、複合材料などについては、作業名だけで粉じん則の該当性を断定せず、対象物の性状・由来・組成を確認したうえで個別に判断してください。判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署または専門家にご相談ください。

製造業の工場で該当しやすい作業例

以下は、製造業の工場で粉じん則上の確認が必要になりやすい作業の例です。ただし、対象物質が粉じん則上の「鉱物等」「炭素原料等」「金属」などに該当するかどうかの確認が前提となります。たとえば、樹脂や人工的に合成された粉体については、「鉱物等」や「鉱石」の定義との照合が必要です。材料の種類・由来・粒径を含めて個別に確認してください。

作業例 関係しやすい別表第2の号 第4条の表に列挙された措置 局所排気装置の確認要否 現場で見るポイント
サンドブラスト・ショットブラスト 第6号・第8号 密閉設備の設置、または局所排気装置の設置 要確認 密閉ブース内の気密性・内圧管理、排気処理、除じん装置の状態を確認する。
固定式グラインダー(両頭グラインダーなど)による金属部品のばり取り・研磨 第7号 局所排気装置の設置、または湿潤化 要確認 フードの位置・形状、吸引口と発生源との距離、制御風速を確認する。なお、別表第2では手持式または可搬式動力工具によるものが除かれる場合があるため、固定式設備か手持式工具かを現場で確認する。
鉱物・炭素原料等の粉砕・ふるい分け(屋内) 第8号 密閉設備の設置、局所排気装置の設置、または湿潤化 要確認 対象物質の種類確認のうえ、密閉カバー・局所排気・湿潤化のどれが適用されているかを確認する。
セメント・粉状鉱石等の袋詰め 第9号 局所排気装置の設置、またはプッシュプル型換気装置の設置 要確認 袋詰め口付近のフード設置・吸引状態、作業中の稼働状況を確認する。
タルク等の粉体原料の投入・混合 第10号・第11号 密閉設備の設置、局所排気装置の設置、プッシュプル型換気装置の設置、または湿潤化 要確認 投入口の密閉状況または局所排気の設置状況、作業時の粉じん飛散状況を確認する。
鋳造工場における砂落とし・砂再生・鋳ばり取り 第8号・第14号・第15号 密閉設備の設置、局所排気装置の設置、またはプッシュプル型換気装置の設置 要確認 型ばらし装置・砂再生設備・ばり取り作業箇所のフード位置、稼働状況、除じん装置の整備状態を確認する。
金属溶射 第15号 密閉設備の設置、局所排気装置の設置、またはプッシュプル型換気装置の設置 要確認 溶射ブースの構造、フードの位置・捕捉状況、作業者の保護具使用状況とあわせて確認する。
対象物質が「鉱物等」「炭素原料等」「金属」「アルミ箔」など粉じん則上の分類に該当するかどうかによって、別表第2・第4条の適用が変わります。作業名だけで判断せず、取り扱う材料の性状・組成を確認したうえで個別に判断してください。

特定粉じん発生源に該当しない粉じん作業では何が求められるか

特定粉じん発生源(別表第2)に該当しない粉じん作業については、粉じん則第4条の局所排気装置等の設置義務の対象ではありません。しかし、これは「何もしなくてよい」ということではありません。

粉じん則第5条により、屋内作業場でこれらの粉じん作業が行われる場合、事業者は全体換気装置による換気またはこれと同等以上の措置を講ずる義務があります。全体換気装置の設計・稼働状況の管理も、確認が必要な項目の一つです。

また、坑内作業場やずい道等の建設作業では、粉じん則第6条・第6条の2など、別の規定の確認が必要になります。

整理のポイント

  • 特定粉じん発生源に非該当 → 第4条の局所排気装置等の措置対象ではない
  • 屋内作業場 → 第5条の全体換気装置による換気またはこれと同等以上の措置が必要
  • 坑内・ずい道等 → 第6条・第6条の2等の確認が別途必要

局所排気装置を設置した後の管理

粉じん則上、局所排気装置は設置して終わりではありません。構造・性能要件、稼働管理、定期自主検査、記録保存まで、継続的な管理が必要です。

管理項目 根拠 確認内容 頻度または保存期間 現地調査で見るポイント
構造・性能要件 粉じん則第11条、昭和54年労働省告示第67号 フードの形式・位置・囲い込み状況。ダクト、ファン、排出口の構造。フードの形式ごとの制御風速が確保されているか。 設置時・変更時 フードが発生源を適切に囲い込んでいるか、排出口が屋外等に適切に開口しているかを現場で確認する。
作業中の有効稼働 粉じん則第12条 粉じん発生作業中に局所排気装置が有効に稼働しているか。電源のON/OFF確認、稼働記録の有無。 作業のたびに確認 作業開始前に必ず稼働させているか、稼働確認の手順書があるか、インタビューで確認する。
除じん装置 粉じん則第10条・第13条・第14条(第10条:設置要件、第13条:除じん方式、第14条:有効稼働) 粉じんを含む気体の排出に除じん装置を設けているか。除じん装置の種類・方式・性能。作業中に有効稼働しているか。 設置要件の確認は設置時。稼働確認は作業のたびに。 除じん装置の設置の有無、目詰まり・破損・粉じん堆積の有無、作業中の稼働状況を確認する。
定期自主検査 粉じん則第17条・第18条 1年以内ごとに1回の定期自主検査の実施。フード・ダクト・除じん装置・排風機の検査を含む。 1年以内ごとに1回。記録は3年間保存。 最後の検査実施日、検査記録の内容、指摘事項への対応履歴を確認する。
点検・補修 粉じん則第19条・第20条・第21条 局所排気装置、プッシュプル型換気装置または除じん装置を初めて使用するとき、または分解して改造・修理を行ったときに、所定の事項を点検する。異常が認められた場合は補修その他必要な措置を講じる。点検結果を記録し保存する。 初めて使用するとき、または分解して改造・修理を行ったとき。点検記録は3年間保存。 新設・改造・修理後の点検記録があるか。異常が認められた場合に補修その他必要な措置が記録されているかを確認する。
昭和54年労働省告示第67号は、粉じん則上の局所排気装置の性能要件(制御風速等)を定めた告示です。有機則・特化則における局所排気装置の性能要件(昭和46年告示第91号など)とは別に定められていますので、適用する告示を確認してください。

作業環境測定は、局所排気装置の管理状態を確認する材料にもなる

粉じん則上の作業環境測定は、すべての粉じん作業で半年ごとに実施が必要なわけではありません。対象は常時特定粉じん作業が行われる屋内作業場です(粉じん則第25条・第26条)。頻度は6月以内ごとに1回、測定記録・評価記録はともに7年間保存する必要があります(第26条の2)。

局所排気装置の視点では、作業環境測定の結果が第三管理区分となった場合、施設・設備・作業方法の点検・改善が必要となり、局所排気装置そのものの見直しが求められることもあります。局所排気装置が設置されていても、測定結果が良好でない場合は、フードの位置、制御風速、稼働状況、除じん装置の状態を再確認することが重要です。

現地調査での確認ポイント

測定記録・評価記録が7年間保存されているか、第三管理区分となった場合の改善対応記録・措置状況届(粉じん則第26条の3の2・第26条の3の3)が揃っているかを書類確認で確認します。

呼吸用保護具との関係

粉じん則における対策の原則は、発生源対策・設備対策です。呼吸用保護具を使用しているからといって、局所排気装置等の設備対策が不要になるわけではありません

ただし、粉じん則には設備設置の適用除外規定があります(第7条・第8条・第9条)。主な内容は以下のとおりです。

第7条:臨時・短時間作業等の適用除外

特定粉じん発生源に係る作業が、臨時に行われる場合または短時間(所定の要件を満たす場合)に行われる場合は、第4条の局所排気装置等の設置義務が除外される場合があります。この場合は、有効な呼吸用保護具の使用が必要とされます。「臨時」「短時間」の解釈は、作業の態様・頻度等によります。

第8条:小規模機器等に関する適用除外

研削といし等を用いて特定粉じん作業を行う場合に、次のいずれかに該当し、かつ有効な呼吸用保護具を使用させるときは、第4条の措置が適用されない場合があります。なお、屋内作業場では全体換気装置による換気、坑内作業場では換気装置による換気が別途必要とされます。

  • 使用前の直径が300mm未満の研削といしを用いる場合
  • 破砕または粉砕の最大能力が毎時20kg未満の破砕機または粉砕機を用いる場合
  • ふるい面積が700cm²未満のふるい分け機を用いる場合
  • 内容積が18L未満の混合機を用いる場合

※「小規模なら局所排気装置が不要」と単純化せず、第8条の要件への該当性と保護具・換気の要件を個別に確認してください。

第9条:作業場の構造等により設備設置が著しく困難な場合の適用除外

作業場の構造等により設備の設置が著しく困難な場合、適用が除外されることがあります。この場合も有効な呼吸用保護具の使用が求められます。

また、粉じん則第27条により、別表第3に掲げる作業については、有効な呼吸用保護具の使用が義務付けられています。設備対策と保護具はどちらか一方を選ぶものではなく、設備対策を原則としたうえで、保護具の使用が必要な局面を整理することが重要です。

よくある誤解に注意

「保護具を着けているから局所排気装置は不要」という判断は、原則として誤りです。適用除外の要件を満たす場合や、法令上保護具使用が代替措置として認められる場合に限り、保護具が発生源対策の代替となる位置付けになります。

じん肺法との関係は、最低限確認しておく

粉じん則は、粉じんの発散防止、作業環境管理、設備対策を定める法令です。一方、じん肺法は、じん肺健康診断などの健康管理を定めており、両者は目的と対象が異なります。

局所排気装置を設置して発生源対策を講じていても、じん肺法上のじん肺健康診断の実施義務は別途存在します。現地調査では、局所排気装置の管理状況とあわせて、じん肺健康診断の実施状況・記録の保存状況も確認することが重要です。

現地調査で確認すべきポイント

現地調査では、書類確認、現場確認、関係者インタビューを組み合わせて、粉じん発生源対策の実態を把握します。

確認項目 確認内容 確認資料 現場で見るポイント インタビュー対象
粉じん作業の洗い出し 別表第1への該当性確認。作業名・対象物・設備・工程を整理する。 作業一覧、工程フロー、SDS 粉じんが目視で確認できる場所・工程を把握する。 安全衛生担当者、現場責任者
特定粉じん発生源への該当性確認 別表第2の各号との照合。対象物質・設備形式・屋内外を確認する。 設備台帳、機器仕様書、法令対応記録 発生源の形状・規模・作業方法を現場で直接確認する。 安全衛生担当者、設備管理担当者
第4条の区分の確認 特定粉じん発生源が第4条のどの区分に該当するか確認する。 法令対応記録、過去の行政確認記録 発生源ごとに採用されている措置が第4条の表の内容と整合しているか確認する。 安全衛生担当者
設備の設置状況 局所排気装置・密閉設備・プッシュプル型換気装置・湿潤化設備の設置状況を確認する。 設備台帳、図面、定期自主検査記録 フードの位置・形状、ダクトの経路・損傷、ファン・排出口の状態を現場で確認する。 設備管理担当者
作業中の稼働状況 粉じん発生作業中に局所排気装置等が有効に稼働しているか確認する。 稼働記録、作業手順書 作業中に設備が停止していないか、フードが発生源から離れた位置にないかを現場で確認する。 実作業者、現場責任者
フードの位置・囲い込み・吸引状態 フードが発生源を適切に囲い込んでいるか、吸引が有効に行われているかを確認する。 設備図面、定期自主検査記録 スモークテスト等による気流の確認。フードと発生源の距離が適切かを現場で確認する。 設備管理担当者、実作業者
制御風速の確認 昭和54年労働省告示第67号に定める制御風速が確保されているか確認する。 定期自主検査記録、測定記録 風速計による実測値の記録を確認する。 設備管理担当者、安全衛生担当者
除じん装置の管理状況 除じん装置の設置の有無、種類、稼働状況、目詰まり・損傷の有無を確認する。 定期自主検査記録、保守記録 除じん装置の外観状態、粉じん堆積の有無、排気処理の方向を現場で確認する。 設備管理担当者
定期自主検査記録 1年以内ごとに1回の定期自主検査が実施され、記録が3年間保存されているか確認する。 定期自主検査記録(3年分) 検査記録の形式・内容・指摘事項への対応状況を確認する。 安全衛生担当者、設備管理担当者
点検・補修記録 初めて使用するとき、または分解して改造・修理を行ったときの点検記録、補修記録の有無を確認する。 点検記録、補修記録、新設・改造・修理時の記録 新設、改造、修理後に点検が行われているか。点検で異常が認められた場合に、補修その他必要な措置が講じられているかを確認する。 設備管理担当者
作業環境測定記録 常時特定粉じん作業が行われる屋内作業場での測定記録(6月以内ごとに1回)・評価記録が7年間保存されているか確認する。 作業環境測定記録、評価記録(7年分) 最後の測定日、評価区分、第三管理区分の場合の改善対応記録を確認する。 安全衛生担当者
じん肺健康診断記録 じん肺法に基づくじん肺健康診断の実施記録、管理区分の記録を確認する。 じん肺健康診断記録、じん肺管理区分記録 健康診断が定期的に実施されているか、管理区分に応じた措置が講じられているかを確認する。 安全衛生担当者
呼吸用保護具の管理 保護具の種類・選定理由、使用・保管・点検・教育の実施状況を確認する。 保護具台帳、選定記録、教育記録 保護具の保管状態、劣化・汚染の有無を現場で確認する。 実作業者、安全衛生担当者
設備変更・作業変更時の再評価 設備改造・作業方法変更時に、粉じん則上の要件の再確認が行われているか確認する。 変更管理記録、届出書類 EHS部門が設備変更情報を受け取る仕組みがあるかをインタビューで確認する。 設備管理担当者、安全衛生担当者

よくある誤解と正しい整理

よくある誤解 正しい整理 確認すべき根拠 現場での注意点
粉じんが出る作業では局所排気装置が必要 粉じん則の局所排気装置等の措置は、「特定粉じん発生源(別表第2)」への該当と、第4条の区分を確認したうえで判断する。「粉じんが出る=局所排気装置が必要」ではない。 粉じん則第2条第1項第2号、別表第2、第4条 まず別表第1・別表第2への該当性確認を行い、第4条の区分を照合することが出発点。
特定粉じん作業では必ず局所排気装置が必要 特定粉じん作業とは、粉じん作業のうち、その粉じん発生源が特定粉じん発生源であるものをいう。特定粉じん作業に該当する場合でも、第4条の区分によって、湿式型削岩機、湿潤化、密閉設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置など、求められる措置は異なる。したがって、特定粉じん作業であれば必ず局所排気装置が必要、とはいえない。 粉じん則第2条第1項第1号〜第3号、別表第1、別表第2、第4条 「特定粉じん作業」の定義(第2条第1項第3号)と、第4条の区分ごとの措置をあわせて確認する。
局所排気装置、密閉設備、湿潤化、プッシュプル型換気装置は自由に選べる 第4条の区分ごとに、第4条の表に列挙された措置が示されている。区分によっては局所排気装置が選択肢に含まれていない場合がある。ただし「同等以上の措置」に関する考え方もあるため、個別判断が必要。 粉じん則第4条 採用している措置が第4条の表の内容と整合しているか確認する。不明な場合は所轄行政機関に確認する。
保護具を着ければ局所排気装置は不要 発生源対策・設備対策が原則。保護具が設備対策の代替となるのは、適用除外の要件(第7条・第8条・第9条)を満たす場合等に限られる。 粉じん則第4条・第7条・第8条・第9条・第27条 適用除外の要件を満たしているか確認せずに保護具のみで対応していないか確認する。
作業環境測定はすべての粉じん作業で半年ごとに必要 対象は「常時特定粉じん作業が行われる屋内作業場」。すべての粉じん作業が対象ではない。 粉じん則第25条・第26条 測定対象の作業場が正しく特定されているか確認する。
局所排気装置を設置すれば対応完了 設置後も稼働管理、定期自主検査(1年以内ごとに1回)、初めて使用するときまたは分解改造修理のときの点検、記録保存(3年間)、作業環境測定、じん肺健康診断との確認が継続的に必要。 粉じん則第12条・第17条〜第21条・第25条・第26条、じん肺法 設置後の管理記録が整備されているか確認する。
粉じん則だけ見ればよく、じん肺法は関係ない 粉じん則は発生源対策・設備対策・作業環境管理を定め、じん肺法は健康管理・健康診断・管理区分を定める。両方の確認が必要。 じん肺法第1条・第7条〜第9条の2・第21条 粉じん発生源対策、作業環境測定、じん肺健康診断をセットで確認する。

まとめ

粉じん則における局所排気装置は、粉じん作業に対する重要な発生源対策の一つです。しかし、必要性の判断は「粉じんが出るかどうか」だけではできません。

確認の順序は、①粉じん作業(別表第1)への該当性、②特定粉じん発生源(別表第2)への該当性、③第4条の区分ごとに示された措置の確認、という流れになります。第4条の措置は区分によって異なり、局所排気装置が選択肢に含まれていない区分もあります。

さらに、局所排気装置を設置した後も、稼働管理、定期自主検査、点検、記録保存、作業環境測定、じん肺健康診断まで含めて継続的な管理が必要です。製造業の工場では、作業名だけで判断せず、実際の対象物質、設備の形式、発生源の区分、作業方法、管理記録を確認することが重要です。

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現場確認、書類確認、関係者インタビューを通じて、粉じん作業、局所排気装置、作業環境測定、じん肺健康診断、呼吸用保護具管理などの運用状況を確認し、社内で継続できる管理体制づくりを支援します。

参考情報

以下は、本記事の根拠となる一次情報・公的資料の一覧です。リンク先・名称・条文番号については、公開情報をもとに整理していますが、最新の内容は原典をご確認ください。

粉じん障害防止規則 第2条、別表第1、別表第2

「粉じん作業」「特定粉じん発生源」「特定粉じん作業」の定義を確認するための根拠。

粉じん障害防止規則 第4条・第5条・第6条・第6条の2

特定粉じん発生源ごとの発散防止措置(局所排気装置等)と、全体換気の義務を確認するための根拠。

粉じん障害防止規則 第7条・第8条・第9条

臨時・短時間作業、小規模機器(300mm未満の研削といし等)、設備設置が著しく困難な場合の適用除外を確認するための根拠。

粉じん障害防止規則 第10条〜第14条

局所排気装置等の構造・性能要件(第11条)、除じん装置の設置(第10条)・除じん方式(第13条)・有効稼働(第14条)、作業中の有効稼働(第12条)を確認するための根拠。

粉じん障害防止規則 第17条〜第21条

定期自主検査(1年以内ごとに1回)、初めて使用するときまたは分解改造修理のときの点検(第19条)、補修(第20条)、記録保存(第21条・3年間)を確認するための根拠。

粉じん障害防止規則 第25条・第26条・第26条の2・第26条の3・第26条の3の2・第26条の3の3

作業環境測定の対象・頻度・評価・第三管理区分への措置・届出を確認するための根拠。

粉じん障害防止規則 第27条、別表第3

別表第3に掲げる作業における呼吸用保護具の使用義務を確認するための根拠。

昭和54年労働省告示第67号

粉じん則上の局所排気装置の構造・性能要件(制御風速等)を確認するための根拠。

じん肺法 第1条・第7条〜第9条の2・第21条

じん肺の定義、じん肺健康診断の対象・頻度・記録管理を確認するための根拠。

法令・告示については、e-Gov法令検索や厚生労働省ウェブサイト等で原典をご確認ください。法令の改正状況により内容が変わっている可能性があります。正式名称・条文番号は、必ず原典にてご確認ください。

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の作業や設備への法令適用を断定するものではありません。実際の該当性や必要な措置は、対象物質の種類・性状、設備の構造、作業の方法、取扱数量、屋内外の区別、所在地、所轄行政機関の判断等により異なる場合があります。本記事の内容を実務に適用する際は、必ず原典の法令・告示・通達を確認の上、必要に応じて所轄の労働基準監督署または専門家にご相談ください。本記事の情報を利用したことによるいかなる損害についても、クシィ・グローブ合同会社は責任を負いかねます。