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実務担当者向けコラム 第4回 労働安全衛生

局所排気装置とは何か?(総論)

全体換気装置・プッシュプル型換気装置との違いと、関係する法令の全体像

掲載:2026年5月4日 / シリーズ:製造業のためのEHS法令用語ノート

工場や事業場では、有機溶剤、特定化学物質、鉛、粉じんなど、作業者の健康に影響を及ぼすおそれのある物質を取り扱うことがあります。こうした有害物による健康障害を防ぐためには、作業の方法、設備、換気、保護具などを組み合わせて管理することが重要です。

第4回では、その中でも代表的な設備である「局所排気装置」について、全体換気装置やプッシュプル型換気装置との違い、関係する法令の全体像を総論として整理します。有機則・特化則・鉛則・粉じん則の各論に入る前に、まず基本的な枠組みを確認しておくことが目的です。

この記事のポイント

  • 局所排気装置は、有害物の発散源近くで吸引する設備
  • 全体換気装置は、作業場全体の空気を入れ替える設備
  • プッシュプル型換気装置は、一定方向の気流をつくって有害物を捕集する設備
  • どの設備が必要かは、対象物質、作業内容、関係する特別則によって異なる

局所排気装置とは何か

労働安全衛生法第22条では、ガス、蒸気、粉じん等による健康障害を防止するため、事業者が必要な措置を講じることが求められています。また、同法第27条では、これらの措置について厚生労働省令で定めることとされています。

局所排気装置は、作業場全体を換気する設備ではなく、有害物が発散する場所の近くで吸引する設備です。有害物が作業場内に広く拡散する前に、発散源の近くで捕集し、作業者が吸い込むリスクを低減することを目的としています。

一言でいえば

局所排気装置は「有害物を発生源の近くで吸い込む設備」です。

全体換気装置との違い

全体換気装置は、作業場全体の空気を入れ替える考え方の設備です。これに対して、局所排気装置は、有害物の発散源に近い場所で吸引する設備です。

全体換気装置は、作業場全体の空気を希釈・入れ替える考え方であるのに対し、局所排気装置は、有害物が広がる前に捕集する考え方です。そのため、対象となる物質や作業によっては、全体換気装置だけでは足りず、局所排気装置などの発散源対策が求められる場合があります。

設備 考え方
局所排気装置 有害物が広がる前に、発散源の近くで捕集する
全体換気装置 作業場全体の空気を希釈・入れ替える

スマートフォンでは横にスクロールしてご確認ください。

プッシュプル型換気装置との違い

局所排気装置と似た設備として、プッシュプル型換気装置があります。局所排気装置は、発散源の近くで有害物を吸い込む設備です。これに対して、プッシュプル型換気装置は、吹出し側と吸込み側を組み合わせ、一定方向の気流をつくって有害物を捕集する設備です。

整理すると

  • 局所排気装置:「近くで吸い込む」設備
  • プッシュプル型換気装置:「空気の流れをつくって捕集する」設備

ただし、どちらを設置すればよいかは、対象物質、作業内容、作業場所、関係する特別則によって異なります。現場で換気設備を確認する際には、設置されている設備の種類だけでなく、その設備が対象作業に対して適切かどうかを確認することが重要です。

関係する主な法令と条文

局所排気装置は、労働安全衛生法だけを見れば足りる設備ではありません。労働安全衛生法第22条と第27条を基本に、具体的な設置義務や設備要件は、省令である各種特別則に定められています。

有機溶剤中毒予防規則(有機則)
第5条・第6条では、有機溶剤業務における発散源対策として、密閉設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置などが規定されています。対象となる業務や作業場の区分によって、求められる設備が異なります。
特定化学物質障害予防規則(特化則)
第4条・第5条・第7条では、特定化学物質を取り扱う作業における発散源対策が規定されています。対象物質の区分や作業内容に応じて、局所排気装置等の設置が問題になります。
鉛中毒予防規則(鉛則)
第5条ほかに、鉛業務における発散源対策として局所排気装置等に関する規定があります。
粉じん障害防止規則(粉じん則)
第4条・第11条・第17条に、粉じん作業における局所排気装置等に関する規定があります。

定期自主検査と計画の届出

さらに、労働安全衛生法第45条、労働安全衛生法施行令第15条第1項第9号により、関係省令で定める局所排気装置、プッシュプル型換気装置、除じん装置などは、定期自主検査の対象となります。ただし、すべての局所排気装置が対象となるわけではなく、関係する特別則の定めによります。

また、労働安全衛生法第88条、労働安全衛生規則第85条・第86条・別表第7により、一定の局所排気装置等を設置、移転、変更する場合には、計画の届出が必要となることがあります。こちらも、すべてが届出対象となるわけではなく、関係省令で定められた要件に該当するかどうかの確認が必要です。

個別確認が必要です

定期自主検査や計画届出の対象に該当するかどうかは、対象物質、作業内容、設備の種類・構造、関係する特別則の規定によって異なります。本記事は一般的な整理を目的としており、個別設備への法令適用を断定するものではありません。

特別則ごとに確認が必要な理由

局所排気装置の管理で注意すべきなのは、「換気設備があるか」だけを見ても十分ではないという点です。有機溶剤、特定化学物質、鉛、粉じんでは、対象となる物質、作業、設備、作業場所が異なります。

そのため、現場では次のような観点から確認することが重要です。

現場で確認すべき観点
  • どの有害物を取り扱っているか
  • どの作業でガス、蒸気、粉じんが発散するか
  • 関係する特別則は何か(有機則、特化則、鉛則、粉じん則など)
  • 局所排気装置、プッシュプル型換気装置、全体換気装置のどれが設置されているか
  • 設備が対象作業に対して適切に設けられているか
  • 関係省令で定める定期自主検査や記録保存の対象になっていないか
  • 設置、移転、変更時の届出対象になっていないか

実務ポイント

現場では「換気設備がある」だけでは不十分です。その作業に対して、法令上求められる設備になっているかを確認することが必要です。

次回以降の予告

今回は、局所排気装置の基本的な考え方を総論として整理しました。次回以降は、有機溶剤中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則、鉛中毒予防規則、粉じん障害防止規則に分けて、局所排気装置がどのような場面で求められるのかを整理していきます。

次の記事

第5回:有機則における局所排気装置とは?

対象物判定、有機溶剤業務該当性、実際消費量と許容消費量、設置義務・適用除外・設置後管理を整理しています。

Ξ Globeで支援できること

クシィ・グローブ合同会社では、製造業の工場・事業場を対象に、局所排気装置等の換気設備を含むEHS法令遵守状況の確認を支援しています。

例えば、次のようなお悩みはないでしょうか。

工場に換気設備はあるが、対象作業に対して適切な設備になっているか確認できていない

定期自主検査の対象になっているかどうか、届出が必要かどうかが整理できていない

有機則・特化則・鉛則・粉じん則のどれが自社の作業に関係するのか整理できていない

こうした場合には、取扱物質、作業内容、設備の状況を整理した上で確認することが重要です。クシィ・グローブでは、現地確認や関係者へのインタビューを通じて、貴社の実態に即した整理を支援します。まずは現状の取扱物質や作業内容の整理からご相談ください。

本記事で参照した主な条文

以下は本記事の根拠となる主な条文の一覧です。最新の内容は必ず原典をご確認ください。

労働安全衛生法

第22条(健康障害防止措置)、第27条(省令への委任)、第45条(定期自主検査)、第88条(計画の届出)

労働安全衛生法施行令

第15条第1項第9号(定期自主検査を行うべき機械等)

労働安全衛生規則

第85条、第86条、別表第7(計画の届出対象となる機械等)

有機溶剤中毒予防規則

第5条、第6条(有機溶剤業務における発散源対策)

特定化学物質障害予防規則

第4条、第5条、第7条(特定化学物質を取り扱う作業における発散源対策)

鉛中毒予防規則

第5条ほか(鉛業務における発散源対策)

粉じん障害防止規則

第4条、第11条、第17条(粉じん作業における換気設備等)

上記の法令・省令については、e-Gov法令検索や厚生労働省ウェブサイト等で原典をご確認ください。法令の改正状況により内容が変わっている可能性があります。条文番号は必ず原典にてご確認ください。

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の設備や作業への法令適用を断定するものではありません。定期自主検査や計画届出の対象への該当性は、対象物質、作業内容、設備の種類・構造、関係する特別則の規定等によって異なる場合があります。本記事の内容を実務に適用する際は、必ず原典の法令を確認の上、必要に応じて所轄の労働基準監督署または専門家にご相談ください。本記事の情報を利用したことによるいかなる損害についても、クシィ・グローブ合同会社は責任を負いかねます。