Factory Background
実務担当者向けコラム 第5回 労働安全衛生 化学物質管理

有機則における局所排気装置とは?

使用している溶剤・製品の対象確認から、設置義務判定・例外・設置後管理まで

掲載:2026年5月4日 / シリーズ:製造業のためのEHS法令用語ノート

有機溶剤を使う作業で「局所排気装置が必要か」という相談を受けたとき、いきなり制御風速や設備仕様の話から始めてしまうことはありませんか。

有機溶剤中毒予防規則(以下「有機則」)における局所排気装置等の設置義務が生じるかどうかは、複数の判定ステップを順番に確認しなければ結論が出ません。まず使用している溶剤・製品が有機則の対象かを確認し、次に有機溶剤業務の該当性を確認し、さらに実際消費量と許容消費量を比較して初めて、設置義務の検討に入る——という順番が重要です。

第5回では、第4回「局所排気装置とは何か?(総論)」の続編として、有機則における局所排気装置等の設置義務の要否判定プロセスを、製造業の現場担当者向けに整理します。

この記事のポイント

  • 有機則の検討は、局所排気装置の要否からではなく、使用している溶剤・製品が対象かどうかの確認から始める
  • 有機溶剤含有物の入口は「重量の五パーセントを超えて含有するもの」
  • 実際消費量と許容消費量の比較が、設置義務の要否を左右する重要な判定になる
  • 第3種有機溶剤等は、通常の屋内作業場とタンク等の内部で設置義務の扱いが異なる
  • 設置義務が生じる場合でも、臨時・短時間・発散面の例外や各種認定・許可がある
  • 自己判断でよい事項と、労基署長・労働局長の認定・許可が必要な事項を混同しない

まず確認すべき3つの入口

有機則における局所排気装置等の設置義務を検討する前に、まず次の3点を順番に確認します。いずれかの段階で対象外と判断されれば、少なくとも有機則に基づく設置義務の検討対象から外れる可能性があります。

設置義務を検討する前の3つの入口
1

使用している溶剤・製品が、有機則上の有機溶剤または有機溶剤含有物に当たるか

根拠:有機則第1条第1項第1号・第2号、労働安全衛生法施行令別表第6の2

2

有機溶剤含有物の場合、有機溶剤を当該混合物の重量の五パーセントを超えて含有するか

根拠:有機則第1条第1項第2号

3

その作業が有機則第1条第1項第6号に定める有機溶剤業務に当たるか

根拠:有機則第1条第1項第6号

有機則の対象外でも化学物質管理は必要

有機則の対象外であっても、化学物質リスクアセスメント、SDS、ラベル表示、保護具、換気など、別の化学物質管理上の確認が不要になるわけではありません。

使用している溶剤・製品が有機則の対象か

有機則における有機溶剤含有物は、有機溶剤と有機溶剤以外の物との混合物で、「有機溶剤を当該混合物の重量の五パーセントを超えて含有するもの」と定義されています(有機則第1条第1項第2号)。

したがって、有機溶剤を含む塗料、接着剤、洗浄剤などを使用していても、含有量が当該混合物の重量の5%以下の場合は、有機則上の有機溶剤含有物に該当しない可能性があります。

SDSの成分欄だけでは不十分な場合がある

SDSに成分含有量が幅を持って記載されている場合(例:「5〜10%」など)や、複数の有機溶剤を含む場合、使用時に希釈する場合などは、SDSの記載だけで判断するのが困難なことがあります。実際の配合比率、使用条件、メーカーへの照会内容を確認し、実態に即した含有量を把握することが重要です。

確認の観点

  • ・SDSの成分名・CAS番号が令別表第6の2に該当するかを確認する
  • ・成分含有量の記載が幅の場合、実際の配合比率をメーカーに照会する
  • ・希釈して使用する場合は、使用時の濃度を確認する
  • ・複数の有機溶剤を含む場合は、労働安全衛生法施行令別表第6の2に該当する有機溶剤の含有量を合算し、当該混合物全体に対して重量の五パーセントを超えるかを確認する

有機則の対象となる有機溶剤の区分

有機則における有機溶剤は、労働安全衛生法施行令別表第6の2に掲げる有機溶剤です。これらは、有機則第1条第1項第3号から第5号により、第1種有機溶剤等、第2種有機溶剤等、第3種有機溶剤等に区分されます。区分の確認はSDSだけでは困難な場合があります。令別表第6の2の物質番号と有機則第1条の定義を照合し、必要に応じてメーカーに照会することが必要です。

第1種有機溶剤等 2物質
  • 1,2-ジクロルエチレン
  • 二硫化炭素

令別表第6の2第28号・第38号の物質、これらのみから成る混合物、またはこれらを重量の五パーセントを超えて含有する混合物(有機則第1条第1項第3号)

第3種有機溶剤等 7物質
  • ガソリン
  • コールタールナフサ
  • 石油エーテル
  • 石油ナフサ
  • 石油ベンジン
  • テレビン油
  • ミネラルスピリット

第1種・第2種以外の有機溶剤等。通常の屋内作業場とタンク等内部で設置義務の扱いが異なる(有機則第1条第1項第5号)

第2種有機溶剤等 35物質
アセトン イソブチルアルコール イソプロピルアルコール イソペンチルアルコール エチルエーテル エチレングリコールモノエチルエーテル エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート エチレングリコールモノノルマルブチルエーテル エチレングリコールモノメチルエーテル オルト-ジクロルベンゼン キシレン クレゾール クロルベンゼン 酢酸イソブチル 酢酸イソプロピル 酢酸イソペンチル 酢酸エチル 酢酸ノルマルブチル 酢酸ノルマルプロピル 酢酸ノルマルペンチル 酢酸メチル シクロヘキサノール シクロヘキサノン N,N-ジメチルホルムアミド テトラヒドロフラン 1,1,1-トリクロルエタン トルエン ノルマルヘキサン 1-ブタノール 2-ブタノール メタノール メチルエチルケトン メチルシクロヘキサノール メチルシクロヘキサノン メチルノルマルブチルケトン

これらの物質のみから成る混合物や一定の混合物も含む(有機則第1条第1項第4号)

古い資料では、有機則の対象有機溶剤を54種類として整理しているものがありますが、現行の対象物質数・物質名は改正により異なる場合があります。本記事では、現行の労働安全衛生法施行令別表第6の2および有機則第1条に基づく区分として整理しています。実務では必ずe-Gov法令検索等で最新の原典をご確認ください。

有機則で定める有機溶剤業務

有機則の対象となる溶剤・製品を使用していても、すべての作業が有機溶剤業務になるわけではありません。有機則第1条第1項第6号では、有機溶剤業務がイからヲまで具体的に列挙されています。列挙されていない作業は、有機溶剤業務に該当しない可能性があります。

有機則で定める有機溶剤業務(有機則第1条第1項第6号)
有機溶剤等の製造の工程における有機溶剤等のろ過、混合、攪拌若しくは加熱の業務又は有機溶剤等を容器若しくは設備に注入する業務
染料、医薬品、農薬、化学繊維、合成樹脂、有機顔料、油脂、香料、甘味料、火薬、写真薬品、ゴム若しくは可塑剤又はこれらのものの中間体を製造する工程における有機溶剤等のろ過、混合、攪拌又は加熱の業務
有機溶剤含有物を用いて行う印刷の業務
有機溶剤含有物を用いて行う文字の書込み又は描画の業務
有機溶剤等を用いて行うつや出し、防水その他物の面の加工の業務
接着のために有機溶剤等を塗布する業務
接着のために有機溶剤等を塗布された物の接着の業務
有機溶剤等を用いて行う洗浄又は払拭の業務
有機溶剤含有物を用いて行う塗装の業務
有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務
有機溶剤等を用いて行う試験又は研究の業務
有機溶剤等を入れたことのあるタンク(有機溶剤等の蒸気の発散するおそれのないものを除く。)の内部における業務

※条文の正確な表現については、有機則第1条第1項第6号の原典(e-Gov法令検索)をご確認ください。

法令に列挙されていない作業については、有機溶剤業務に該当しない可能性があります。ただし、作業名だけで判断せず、実際の作業内容、開放状態、作業者へのばく露のおそれ、作業場所をあわせて確認することが重要です。また、屋外で行う作業については、屋内作業場等に該当するかどうかの確認も必要になります(有機則第1条第1項第7号、同条第2項)。

局所排気装置等の設置義務判定

以下の3つの表を使って、設置義務が生じるかの判定、例外・特例の確認、設置後の維持管理の確認を行います。各表は現場確認の順序を整理したものであり、個別設備への法令適用を断定するものではありません。

表1:局所排気装置等の設置義務が生じるかの判定

設置義務の判定のみを扱います。例外・特例・設置後管理は表2・表3で確認します。

Step 確認事項 見る資料・現場情報 関係条文・通達 判断のポイント
1 有機溶剤そのものか
令別表第6の2に列挙された有機溶剤に該当するかを確認する
SDS(成分名・CAS番号)、製品仕様書 有機則第1条第1項第1号
令別表第6の2
令別表第6の2に列挙されていない物質は「有機溶剤」に該当しない。混合物の場合はStep 2へ
2 混合物の場合、重量5%超か
有機溶剤を当該混合物の重量の五パーセントを超えて含有するかを確認する
SDS(成分・含有量欄)、配合表、メーカー照会記録 有機則第1条第1項第2号 含有量に幅がある場合は実際の配合を確認する。5%以下であれば有機溶剤含有物に非該当の可能性あり
3 有機溶剤業務に該当するか
行っている作業が有機則第1条第1項第6号イ〜ヲに列挙された業務に当たるかを確認する
作業手順書、作業記録、現場確認 有機則第1条第1項第6号
昭和53年基発第707号
列挙されていない作業は対象外となる可能性あり。作業名だけで判断せず、実際の作業内容・ばく露のおそれを確認する
4 第1種・第2種・第3種の区分を確認
使用している有機溶剤等の区分を特定する
SDS、メーカーへの照会、告示 有機則第1条第1項第3〜5号 区分によって設備要件が大きく異なる。第3種有機溶剤等は通常の屋内作業場とタンク等内部で扱いが異なる
5 作業場所を確認
屋内作業場等(屋内作業場・タンク等の内部など)に当たるかを確認する
現地図面、現場確認 有機則第1条第1項第7号
同条第2項
屋内作業場等に当たらない場所では第5条・第6条の設備規定が適用されない可能性がある。タンク等の内部とそれ以外では要件が異なる
6 実際消費量が許容消費量を超えるか
消費する有機溶剤等の量が許容消費量を超えるかを確認する
消費量記録、作業場寸法(気積の計算)、SDS 有機則第2条
昭和53年基発第479号
製品使用量≠実際消費量。業務の種類に応じた係数(厚生労働大臣が別に定める数値)を確認する必要がある。気積は床から4m以内、最大150m³として計算する。許容消費量以下と判断する場合は、計算根拠、使用量記録、作業場の気積、判断日、判断者をエビデンスとして残す
7 第5条・第6条に基づきどの設備が必要か
設置義務が生じる場合の選択肢を確認する
設備台帳、現場確認 有機則第5条・第6条 第1種・第2種有機溶剤等の場合:
屋内作業場等で有機溶剤業務を行う場合、一定の例外を除き、以下のいずれかが必要
  • ・発散源を密閉する設備
  • ・局所排気装置
  • ・プッシュプル型換気装置
第3種有機溶剤等の場合: 通常の屋内作業場では第5条・第6条に基づく設置義務は原則として問題にならない。タンク等の内部で有機溶剤業務を行う場合は、以下のいずれかが問題になる
  • ・発散源を密閉する設備
  • ・局所排気装置
  • ・プッシュプル型換気装置
  • ・全体換気装置

スマートフォンでは横にスクロールしてご確認ください。この表は現場確認の順序を示すものであり、個別設備への法令適用を断定するものではありません。

表2:設置義務が生じる場合の例外・特例・認定確認

表1で設置義務が生じる可能性があると判断した後に確認します。

確認事項 関係条文・通達 必要な確認 注意点
臨時の有機溶剤業務 有機則第8条
昭和53年基発第707号
作業の頻度・経緯を確認する。定期的・継続的に行っている作業でないことを確認する 「臨時」とは一時的・偶発的な業務を指す。定期的・継続的な業務は「臨時」に当たらない。例外に該当しても全体換気装置等の代替措置や保護具が必要になる場合がある
短時間の有機溶剤業務 有機則第9条
昭和53年基発第707号
作業時間の実態を確認する。おおむね3時間を限度とするものであるかを確認する 作業時間の記録・管理が必要。例外に該当しても全体換気装置の設置が必要になる場合がある
発散面が広く局所排気装置等の設置が困難な作業 有機則第10条・第11条・第12条 作業場所の状況、設置困難の理由を確認する 例外に該当しても、全体換気装置の設置と送気マスク等の保護具の使用が必要になる場合がある
所轄労働基準監督署長の一部適用除外認定 有機則第3条 認定書の有無と内容を確認する。現在の作業実態・消費量・レイアウトが認定内容と一致しているかを確認する 事業者の自己判断で使える制度ではない。認定申請が必要。第2条による適用除外とは別の制度であり、適用除外となる規定の範囲も異なる
所轄労働基準監督署長の特例許可 有機則第13条 許可書の有無と内容を確認する。許可条件に従った代替措置が講じられているかを確認する 発散面が広いため設置が困難な場合に認められる制度。許可申請が必要。自己判断で局所排気装置を不設置とできるものではない
発散防止抑制措置に関する許可 有機則第13条の3 許可書の有無と内容を確認する。作業環境測定結果が第一管理区分であることを確認する 行政庁への許可申請、作業環境測定、保護具の使用など厳格な要件がある。自己判断で使える制度ではない
化学物質の管理が一定の水準にある場合の適用除外認定 有機則第4条の2 都道府県労働局長の認定書の有無と有効性を確認する。認定要件(専属の化学物質管理専門家の配置等)への適合状況を確認する 一般的な事業場が自己判断で局所排気装置等を不要とできる制度ではない。厳格な要件があり、都道府県労働局長の認定が必要

スマートフォンでは横にスクロールしてご確認ください。

表3:局所排気装置を設置する場合の維持管理

局所排気装置の設置が必要となった後に確認します。

確認事項 関係条文 見る資料・現場情報 注意点
フード、ダクト、排風機、排気口 有機則第14条・第15条・第15条の2 設備台帳、現場目視確認(摩耗・損傷・腐食・つまり等) フードは発散源にできるだけ近く設ける。排気口は原則として直接外気へ開放する
制御風速 有機則第16条 制御風速の測定記録、定期自主検査記録 フードの型式に応じた制御風速(例:囲い式フードで0.4m/s以上)を確保する必要がある
稼働状況 有機則第18条 稼働記録、現場確認(作業中の稼働状況) 有機溶剤業務を行う間、常時稼働させる義務がある。稼働させずに作業している実態がないかを確認する
定期自主検査 有機則第20条 定期自主検査記録(1年以内ごとに1回) フード・ダクトの摩耗・損傷、じんあいの堆積、吸気・排気能力の確認等が検査項目となる
記録保存 有機則第21条 定期自主検査記録の保存状況(3年間) 検査結果および補修内容を記録し、3年間保存する義務がある
計画届 労働安全衛生法第88条
労働安全衛生規則第85条・第86条・別表第7
計画届の控え、設備新設・改造・移転の記録 設置・移転・主要構造部分の変更の際に届出が必要になる場合がある。すべての局所排気装置が届出対象となるわけではなく、対象要件の確認が必要
有機溶剤作業主任者による点検の実施状況 有機則第19条の2 点検の実施状況が分かる資料、必要に応じて社内点検記録、作業主任者へのインタビュー 有機溶剤作業主任者は1月を超えない期間ごとに局所排気装置等を点検する職務がある。点検の実施状況と現場実態が一致しているかを確認する。社内で点検記録を作成している場合は、その記録内容も確認する

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ステップ6:実際消費量と許容消費量を比較する

表1のステップ6で確認するのが、実際消費量と許容消費量の比較です。有機則第2条では、消費量が許容消費量を超えない場合に、第二章などの規定が適用されない場合があります。

実際消費量とは

屋内作業場等のうちタンク等の内部以外の場所では、作業時間1時間に消費する有機溶剤等の量が確認対象となります。タンク等の内部では、1日に消費する有機溶剤等の量が確認対象となります。

ここでいう実際消費量は、単なる製品使用量ではありません。業務の種類に応じて、消費する有機溶剤等の量、または塗布・付着している有機溶剤等の量に、厚生労働大臣が別に定める数値を乗じて求めることになります。塗料、接着剤、洗浄剤、インキなどを使用する場合は、製品使用量をそのまま「消費量」として扱えるわけではありません。有機溶剤等の含有量、使用量、業務の種類に応じた係数を確認する必要があります。

許容消費量の算定式

許容消費量 W(単位:グラム)は、作業場の気積 A(単位:立方メートル)に応じて、以下の式で算定されます。

許容消費量の算定式(有機則第2条)
溶剤の区分 許容消費量 W(グラム)
第1種有機溶剤等 W = 115 × A
第2種有機溶剤等 W = 25 × A
第3種有機溶剤等 W = 32 × A

A(気積):作業場の容積(立方メートル)。ただし、床面から4メートルを超える高さにある空間は除きます。また、気積が150立方メートルを超える場合は、150立方メートルとして計算します。

比較の方法と注意点

  • タンク等の内部以外の屋内作業場等では、作業時間1時間に消費する有機溶剤等の量が許容消費量を超えるかを確認します。
  • タンク等の内部では、1日に消費する有機溶剤等の量が許容消費量を超えるかを確認します。
  • 第2条による適用除外と第3条の認定による適用除外は、適用除外となる規定の範囲が異なります。条文に基づいて区別することが重要です。
  • 許容消費量以下の場合でも、化学物質リスクアセスメント、換気、保護具等の管理は引き続き必要です。

自己判断の根拠を整えておく

第2条は許容消費量の計算と比較を事業者が適切に行うことで適用される制度ですが、消費量の記録・気積の計算・係数の確認という根拠を整えておくことが必要です。「許容消費量以下だから大丈夫」と根拠なく判断するのは危険です。

許容消費量以下と判断する場合は、根拠資料を残す

有機則第2条により、実際消費量が許容消費量を超えない場合には、一定の規定が適用されず、局所排気装置等の設置義務の検討対象から外れる場合があります。この場合、所轄労働基準監督署長の認定を受ける制度(第3条)ではなく、事業者が法令に基づき自ら判断する場面になります。だからこそ、判断根拠をエビデンスとして残すことが重要です。

現場診断や行政調査において確認される可能性がある根拠資料として、以下のものが考えられます。

  • 使用している製品のSDS(安全データシート)
  • 有機溶剤の含有率確認記録(重量5%超に該当するか判断した根拠)
  • 有機溶剤業務の該当性を確認したメモ・記録
  • 作業場の気積算定根拠(図面・寸法メモ等)
  • 許容消費量(W)の計算シート(種別・A・計算結果)
  • 実際消費量の記録(使用量・作業時間・頻度等)
  • 実際消費量の算定に用いた係数の根拠(厚生労働大臣が別に定める数値)
  • 許容消費量と実際消費量の比較結果
  • 判断を行った日付と担当者
  • 使用量・作業内容・作業場所が変わった場合の再判定ルール
  • 化学物質リスクアセスメントの実施記録(許容消費量以下の場合でも実施が必要)

変更管理の観点から

使用する製品の変更、使用量の増加、作業場所の移動、作業時間の延長があった場合は、許容消費量の判断を改めて行う必要があります。一度「以下」と判断したままにしておくことのないよう、変更管理のルールとあわせて運用することが重要です。また、化学物質リスクアセスメントに基づく措置(換気、保護具等)は、消費量の多少にかかわらず継続して求められます。

ステップ7:第5条・第6条に基づく設備の選択肢を確認する

表1のステップ7では、実際消費量が許容消費量を超え、適用除外に当たらない場合に、有機則第5条・第6条に基づき、どの設備が必要となるかを確認します。

有機則第5条(第1種・第2種有機溶剤等)

屋内作業場等において、第1種有機溶剤等または第2種有機溶剤等に係る有機溶剤業務に労働者を従事させる場合、一定の例外を除き、以下のいずれかを設けることが求められます。

  • ・有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備
  • ・局所排気装置
  • ・プッシュプル型換気装置

※有機則第1条第1項第6号ヲに掲げる業務(有機溶剤等を入れたことのあるタンク等の内部における業務)は第5条の適用から除外されています。ただし、タンク等の内部であっても、ヲ号以外の業務(例:タンク内での塗装など)は第5条の対象となる場合があります。

有機則第6条(第3種有機溶剤等)

第3種有機溶剤等については、タンク等の内部で有機溶剤業務(吹付けを除く作業)を行う場合に限り、以下のいずれかを設ける義務が問題になります。

  • ・発散源を密閉する設備
  • ・局所排気装置
  • ・プッシュプル型換気装置
  • ・全体換気装置

第1種・第2種では全体換気装置は原則として選択肢にならない

第1種・第2種有機溶剤等については、全体換気装置の設置は有機則第5条上の設備義務を満たす選択肢として原則として認められていません(昭和53年基発第707号参照)。第3種有機溶剤等のタンク等の内部での作業においてのみ、全体換気装置が選択肢となります。

局所排気装置の構造要件と制御風速

局所排気装置は、フード、ダクト、排風機、排気口などから構成されます。フードは発散源にできるだけ近く設け、排気口は原則として直接外気へ開放しなければなりません(有機則第14条・第15条・第15条の2)。フードの型式に応じた制御風速の確保が求められ(有機則第16条)、有機溶剤業務を行う間、常時稼働させる義務があります(有機則第18条)。

第3種有機溶剤等の場合は、通常の屋内作業場とタンク等内部で扱いが異なる

第3種有機溶剤等については、通常の屋内作業場で有機溶剤業務を行う場合、有機則第5条・第6条に基づく局所排気装置等の設置義務は原則として問題になりません。

一方、第3種有機溶剤等について、タンク等の内部で有機溶剤業務(吹付けを除く作業)を行う場合は、有機則第6条に基づき設備設置義務が問題になります。この場合も、局所排気装置が必ず必要というわけではなく、発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置、全体換気装置のいずれかが選択肢となります。

吹付け作業については、有機則上の別途の規定が関係する場合があるため、作業内容に応じた条文を個別に確認することが必要です。

なお、第3種有機溶剤等について第5条・第6条に基づく局所排気装置等の設置義務が問題にならない場合でも、他の条文、他法令、化学物質リスクアセスメント結果に基づく措置まで不要になるわけではありません。

まとめ:第3種有機溶剤等の場合

作業場所 第5条・第6条に基づく設置義務
通常の屋内作業場 原則として問題にならない(第5条の規定は第3種には適用されず、第6条の対象は主にタンク等の内部)
タンク等の内部(吹付けを除く) 第6条に基づく設備設置義務が問題になる(密閉設備・局所排気装置・プッシュプル型換気装置・全体換気装置のいずれか)

設置義務が生じる場合の例外・特例を確認する

表1で局所排気装置等の設置義務が生じる可能性があると判断した場合でも、表2のように、臨時作業、短時間作業、発散面が広い作業、労基署長の認定・許可などにより、別の扱いが認められる場合があります。

有機則第8条:臨時に有機溶剤業務を行う場合

臨時に有機溶剤業務を行う場合について、設備の設置等に関する規定の適用が緩和される場合があります。ここでいう「臨時」とは、一時的・偶発的に行う業務を指し、定期的・継続的に行う業務は含まれないとされています(昭和53年基発第707号参照)。例外に該当する場合でも、全体換気装置の設置または送気マスク等の保護具の使用といった代替措置が求められる場合があります。

有機則第9条:短時間の有機溶剤業務を行う場合

短時間の有機溶剤業務(おおむね3時間を限度とするものとされています)については、設備の設置の特例が認められる場合があります。この場合も、全体換気装置の設置が必要となる場合があります(有機則第9条)。作業時間の管理と実態把握が重要です。

有機則第10条・第11条・第12条:発散面が広い作業など

壁面・天井・床などへの塗装作業など、発散面が広いために局所排気装置等の設置が困難な場合について、全体換気装置を設け、かつ送気マスクまたは有機ガス用防毒マスク等を使用させることによる特例が設けられています(有機則第10条等)。

実務ポイント

「臨時」「短時間」の解釈は、通達(昭和53年基発第707号等)を確認することが重要です。定期的・継続的に行っている作業を「臨時」として扱うことはできません。作業の頻度・時間・実態を記録し、根拠を明確にしておくことが必要です。

労基署長の一部適用除外認定・特例許可

有機則第3条:一部適用除外認定

有機則第3条では、常態として許容消費量を超えない場合などに、所轄労働基準監督署長の認定を受けることで、省令の一部規定が適用されない場合があります。事業者が自己判断だけで「少量だから対象外」とする制度ではありません。認定を受けるためには申請が必要であり、申請書、認定通知、作業場の見取図、使用量の根拠、現場実態が一致しているかを確認する必要があります。

第2条による適用除外と、第3条の認定による適用除外は別の制度であり、適用除外となる規定の範囲も異なります。混同しないよう注意が必要です。

有機則第13条:特例許可

有機則第13条では、有機溶剤の蒸気の発散面が広いため、第5条または第6条第2項による設備の設置が困難な場合、所轄労働基準監督署長の許可を受けて、局所排気装置等を設けないことができる場合があります。許可申請書、作業場の見取図、代替措置の内容、保護具の使用計画など、許可の要件を確認する必要があります。

有機則第13条の3:発散防止抑制措置に関する許可

有機則第13条の3では、発散防止抑制措置を講じ、作業環境測定結果が第一管理区分となることを条件として、別の管理方法が認められる場合があります。この制度も事業者の自己判断で使えるものではなく、行政庁への許可申請、作業環境測定、保護具の使用など、厳格な要件が前提となります。

認定・許可書と現状の一致を確認する

認定・許可を受けていても、その後の作業内容の変更・消費量の増加・レイアウトの変更などにより、認定・許可の内容と現状が乖離している場合があります。定期的に書類と現場実態を照合することが重要です。

化学物質の管理が一定の水準にある場合の適用除外認定

有機則第4条の2に基づく制度として、化学物質の管理が一定の水準にある事業場について、都道府県労働局長の認定により、有機則の一部規定が適用除外となる制度が設けられています。いわゆる自律的管理に伴う適用除外認定に位置付けられますが、一般的な事業場が自己判断で局所排気装置等を不要とできるものではありません。

主な認定要件(有機則第4条の2等)
  • 専属の化学物質管理専門家の配置
  • 過去3年間の有機溶剤等による労働災害がないこと
  • 作業環境測定結果が第一管理区分に区分されていること
  • 健康診断結果において異常所見がないこと
  • 外部の化学物質管理専門家による評価を受けていること
  • 有機則等の関係法令に違反していないこと
  • 都道府県労働局長の認定および認定の更新

通常の局所排気装置管理の代替として安易に使える制度ではない

この制度は、化学物質管理の水準が高いと認められた事業場に限って認められるものです。局所排気装置の設置・維持に係るコストや手間を省く目的で活用できる制度ではありません。

局所排気装置を設置する場合の維持管理

局所排気装置を設置した場合、継続的に性能を維持し、正しく稼働させることが法的に求められます。維持管理の全体像は表3に示しましたが、主な義務を以下に整理します。

構造・稼働要件

フードは発散源にできるだけ近く設け、排気口は原則として直接外気へ開放しなければなりません(有機則第14条・第15条・第15条の2)。フードの型式に応じた制御風速(例:囲い式フードでは0.4m/s以上)を確保し(有機則第16条)、有機溶剤業務を行う間、常時稼働させる義務があります(有機則第18条)。

定期自主検査と記録保存

有機則第20条に基づき、局所排気装置については1年以内ごとに1回、定期自主検査を行わなければなりません。検査結果および補修内容は記録し、3年間保存する義務があります(有機則第21条)。初めて使用するときや改造・修理を行った後の事前点検も必要です(有機則第19条の2)。

有機溶剤作業主任者による点検

有機溶剤作業主任者は、局所排気装置等を1月を超えない期間ごとに点検する職務が課されています(有機則第19条の2)。点検の実施状況と現場実態が一致しているかを確認することが重要です。社内で点検記録を作成している場合は、その記録内容も確認します。

計画届

一定の局所排気装置等を設置、移転、または主要構造部分を変更しようとする場合には、労働安全衛生法第88条、労働安全衛生規則第85条・第86条・別表第7に基づき、計画の届出が必要となることがあります。すべての局所排気装置が届出対象となるわけではなく、対象要件の確認が必要です。

現場で確認すべきポイント

書類確認・現場確認・関係者インタビューのポイント

書類確認

  • 使用している溶剤・製品のSDSで成分含有量を確認し、令別表第6の2への該当性と「重量の五パーセントを超えて含有するもの」の判定を行う
  • 実際消費量の計算根拠(消費量記録・係数・気積の計算)を確認する
  • 第2条の適用除外、第3条の認定、第13条・第13条の3の許可、第4条の2の認定の書類と現状の一致を確認する
  • 計画届の控えと、届出対象設備に該当するかの確認を行う
  • 年1回の定期自主検査記録と3年間の保存状況を確認する
  • 許容消費量以下として、局所排気装置等の設置義務が適用されないと判断している場合、その判断根拠となる計算シート、使用量記録、作業時間記録、気積の算定根拠、判断者・判断日の記録を確認する
  • 使用量、作業時間、作業場所、使用製品が変わった場合の再判定ルールがあるかを確認する

現場確認

  • フード・ダクト・排風機・排気口の設置状況を目視で確認する
  • フードの近くで気流を妨げる物がないかを確認する
  • 有機溶剤業務を行う間、局所排気装置が稼働しているかを確認する
  • 作業者が正しい位置・姿勢でフードを使用しているかを確認する

関係者インタビュー

  • 作業主任者への個別インタビューを通じ、1月を超えない期間ごとの点検の実施状況を確認する。社内で点検記録を作成している場合は、その内容と現場実態の整合性も確認する。
  • 作業者への個別インタビューを通じ、稼働状況・作業手順書通りに作業しているかを確認する
  • 臨時・短時間作業として運用している作業があれば、その実態と頻度を確認する

実務ポイント

SDS、消費量記録、設備台帳、点検記録、現場確認、関係者インタビューを組み合わせることが、実効性のある安全衛生管理の鍵となります。書類と現場実態に乖離がないかを確認することが特に重要です。

次回予告

今回は、有機則における局所排気装置等の設置義務判定プロセスを、対象物の確認から設置後の維持管理まで整理しました。

次回予告

第6回(予定):特定化学物質障害予防規則における局所排気装置とは?

※掲載時期は変更になる場合があります

Ξ Globeで支援できること

有機則における局所排気装置の要否は、SDSだけでは判断しにくく、作業内容、消費量、作業場所、設備、記録をあわせて確認する必要があります。クシィ・グローブでは、EHSコンプライアンス自走化・定期点検サービスを通じて、現場確認・書類確認・関係者インタビューに基づく整理を支援します。

例えば、次のようなお悩みはないでしょうか。

使用している塗料・洗浄剤が有機則の対象か、許容消費量の計算が正しいか確認できていない

局所排気装置の定期自主検査記録・計画届の管理状況と現場実態の整合性が確認できていない

第2条の適用除外と第3条の認定の違いが整理できておらず、現場の運用根拠が曖昧になっている

本記事で参照した主な条文

最新の内容は必ず原典をご確認ください。

労働安全衛生法

第88条(計画の届出)

労働安全衛生法施行令

別表第6の2(有機溶剤の種類)※有機則の対象有機溶剤の区分一覧でも参照

労働安全衛生規則

第85条、第86条、別表第7(計画の届出対象となる機械等)

有機溶剤中毒予防規則(中心条文)

第1条、第2条、第3条、第4条の2、第5条、第6条、第8条、第9条、第10条、第11条、第12条、第13条、第13条の2、第13条の3、第14条、第15条、第15条の2、第16条、第18条、第18条の2、第18条の3、第19条の2、第20条、第21条

有機溶剤中毒予防規則(補足参照)

第17条(第3種有機溶剤等においてタンク等内部で全体換気装置を選択する場合等の参照)、第28条、第28条の2、第28条の3、第28条の4(作業環境測定)、第33条の2(保護具)

e-Gov法令検索や厚生労働省ウェブサイト等で原典をご確認ください。法令の改正状況により内容が変わっている可能性があります。

本記事で参照した主な通達・行政解釈

昭和53年12月25日 基発第707号

有機溶剤中毒予防規則の一部を改正する省令の施行について。本記事では以下の論点で参照しています:第1種・第2種有機溶剤等について全体換気装置の設置が原則として選択肢にならない旨(ステップ7)、有機則第8条「臨時に有機溶剤業務を行う」が一時的・偶発的な業務を指し定期的・継続的な業務は含まれないとされる旨(例外・特例)、有機則第9条「短時間」がおおむね3時間を限度とするものとされる旨(例外・特例)。

昭和53年8月31日 基発第479号

労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令及び有機溶剤中毒予防規則等の一部を改正する省令の施行について。本記事では以下の論点で参照しています:許容消費量の算定における気積の考え方(床から4m以内、最大150m³)(ステップ6)、実際消費量の算定における係数(厚生労働大臣が別に定める数値)の考え方(ステップ6)。

通達は法令ではなく行政解釈を示すものです。最新の改正状況、最新の行政解釈については、所轄労働基準監督署または厚生労働省ウェブサイト等でご確認ください。通達番号は原典をご確認ください。

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の設備や作業への法令適用を断定するものではありません。有機則の適用の有無、局所排気装置等の設置義務の要否、許容消費量の計算、各種認定・許可の要件への該当性は、使用している溶剤・製品の種類、作業内容、作業場所、消費量、設備の種類・構造、行政庁の認定・許可の有無、測定結果等によって異なる場合があります。本記事の内容を実務に適用する際は、必ず原典の法令・通達を確認の上、必要に応じて所轄の労働基準監督署または専門家にご相談ください。本記事の情報を利用したことによるいかなる損害についても、クシィ・グローブ合同会社は責任を負いかねます。