SDSは、化学物質を取り扱う製造業の現場では必ず登場する書類です。購買担当者が納入業者から受け取り、環境安全担当者が管理台帳に登録し、現場の作業者が手順書の参考資料として参照する。そういった形で、SDSは工場の中で広く使われています。
しかし、SDSに関わる法令は一つではありません。労働安全衛生法、化管法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)、毒物及び劇物取締法(毒劇法)の3法令がそれぞれSDS制度を持っており、対象物質、記載事項、JIS Z 7253との関係、罰則や行政措置のかかり方が異なります。
SDSを受け取ってファイルに保管するだけでは、法令上の義務を果たしているとはいえません。SDSをもとに、どの法令の対象物質なのかを確認し、リスクアセスメント、保護具選定、作業手順、保管管理、緊急時対応に反映することが求められています。
この記事で分かること
- SDSの意味と、製造業の工場実務における位置づけ
- 安衛法・化管法・毒劇法の3法令でSDS制度の目的・対象・実務上の見方がどう違うか
- 対象物質・対象製品・含有率・適用除外の整理の仕方
- SDSの記載事項と3法令の要求事項の差分。JIS Z 7253との関係
- 安衛法の令和7年改正によるSDS通知義務違反への罰則新設と施行時期
- 化管法SDS制度とPRTR届出制度の違い
- 工場でSDSを受け取ったときに確認すべき実務上のポイント
1. SDSとは何か
SDS(Safety Data Sheet)は、日本語では安全データシートといいます。化学物質や化学品を他の事業者に譲渡・提供する際に、その成分、危険有害性、取扱い上の注意、応急措置、保管方法、廃棄上の注意などを伝えるための文書です。
製造業の現場では、洗浄剤、塗料、接着剤、溶剤、めっき薬品、試薬、処理剤、潤滑油など多くの化学品が使われています。SDSは、これらの化学品について、何が含まれているか、どのような危険有害性があるか、どのような保護具や換気が必要かを把握するための入口となる資料です。
SDSは「ファイルに保管するだけ」の書類ではない
SDSを受け取った事業者は、そこに書かれた情報を、リスクアセスメント、作業手順、保護具の選定、局所排気装置、保管管理、漏えい時の対応、廃棄方法の確認につなげる必要があります。どの法令の対象物質なのか、どの情報を現場管理に使うべきかを確認することが求められます。
SDSを義務付ける法令は一つではなく、労働安全衛生法(以下、安衛法)、化管法、毒物及び劇物取締法(以下、毒劇法)の3法令がそれぞれSDS制度を持っています。これらの法令は、目的・対象物質・記載事項・罰則のかかり方が異なります。以下でそれぞれを整理します。
2. SDSを義務付ける主な法律
以下の表で、安衛法・化管法・毒劇法のSDS制度の概要を比較します。
| 法令 | 制度の目的 | 主な対象物質 | SDS提供義務の中心 | 実務上の見方 |
|---|---|---|---|---|
| 労働安全衛生法 | 職場における労働者の安全と健康の確保、快適な職場環境の形成 | 通知対象物、表示対象物、リスクアセスメント対象物。令和8年4月1日施行の改正により、令和8年6月現在、ラベル表示・SDS交付・リスクアセスメントの義務対象物質は2,316物質となっている。実務では厚生労働省の最新の表示・通知義務対象物質一覧で確認する | 化学物質の譲渡・提供時のSDS通知(第57条の2) | SDSをもとにリスクアセスメント、ばく露低減措置、保護具選定、作業手順、労働者への周知へつなげる |
| 化管法 | 化学物質の自主的な管理の改善の促進と、環境保全上の支障の未然防止 | 第一種指定化学物質(515物質)、第二種指定化学物質(134物質)およびこれらを含む対象製品 | 化学品の他者への譲渡・提供時の情報提供(第14条) | 化管法にはPRTR制度とSDS制度の両方がある。PRTR届出対象の第一種指定化学物質と、SDS対象(第一種+第二種)の範囲は異なる |
| 毒物及び劇物取締法 | 毒物及び劇物について、保健衛生上の見地から必要な取締りを行うこと | 毒物(106品目)、劇物(340品目)、特定毒物(10品目)。毒物及び劇物取締法の別表と毒物及び劇物指定令で指定される。実務では、物質名だけでなく、濃度、製剤、除外規定を確認する | 毒物劇物営業者による販売・授与時の性状及び取扱いに関する情報提供(施行令第40条の9) | SDSだけでなく、登録、表示、譲渡手続、保管、盗難・紛失防止、事故時対応も見る必要がある |
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化管法のSDS制度とPRTR制度を混同しない
化管法にはPRTR制度(事業所ごとに第一種指定化学物質の排出量・移動量を算定・届出する制度)とSDS制度(化学品の情報を譲渡先に伝える制度)の両方があります。PRTR届出制度の対象となる事業者要件(対象業種・従業員数・年間取扱量等)と、化管法SDS制度の対象範囲は同じではありません。「PRTR届出の対象外だから、化管法SDSも不要」とは一概にいえません。
3. 対象物質・対象製品の違い
3法令の対象物質・対象製品の範囲を比較します。SDSを受け取ったとき、その化学品がどの法令の対象に該当するかを確認するための基本情報です。
安衛法の表示・通知義務対象物質について
安衛法では、ラベル表示、SDSによる通知、リスクアセスメントの対象となる物質が、表示・通知義務対象物質として整理されています。令和8年4月1日施行の改正により、令和8年6月現在、ラベル表示・SDS交付・リスクアセスメントの義務対象物質は2,316物質となっています。混合物の場合は、対象物質を裾切値以上含有するかどうかも確認が必要です。実務では、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」が公開する最新の表示・通知義務対象物質一覧で対象該当性を確認してください。また、令和9年4月1日施行予定分など、まだ施行されていない追加予定物質が含まれる資料と、現在施行済みの対象物質を混同しないよう注意が必要です。
| 法令 | 対象物質 | 対象製品・含有率等 | 主な適用除外 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 安衛法 | 通知対象物(リスクアセスメント対象物等)。労働者に危険又は健康障害を生ずるおそれのある物として指定される | 混合物の場合は対象物質を一定の含有率(裾切値)以上含むもの。物質ごとに裾切値が異なる | 専ら一般消費者の生活の用に供される製品等 | 対象物質は段階的に拡大されてきた。令和8年4月1日施行の改正により、令和8年6月現在、ラベル表示・SDS交付・リスクアセスメントの義務対象物質は2,316物質となっている。今後も追加される可能性があるため、実務では厚生労働省の最新の表示・通知義務対象物質一覧で個別物質ごとに確認する |
| 化管法 | 第一種指定化学物質(515物質)、第二種指定化学物質(134物質) | 第一種指定化学物質等は製品中1質量%以上(特定第一種指定化学物質は0.1質量%以上)、第二種指定化学物質等は1質量%以上が基本 | 事業者による取扱いの過程で固体以外の状態にならず粉状・粒状にならない製品、密封製品、主として一般消費者の生活の用に供される製品、再生資源など | PRTR届出対象の第一種指定化学物質と、化管法SDS対象(第一種+第二種)の範囲は別。また化管法SDS制度の適用除外と、PRTR届出要件の判断は独立して確認する |
| 毒劇法 | 毒物(106品目)、劇物(340品目)、特定毒物(10品目)。毒物及び劇物取締法の別表と毒物及び劇物指定令で指定される。物質名のほか、濃度、製剤、除外規定により該当性が変わる場合がある | 濃度、製剤、塩、除外規定、グループ名指定により該当性が変わる場合がある | 医薬品・医薬部外品は毒劇法上の毒物・劇物の定義から除かれる。農薬については、農薬取締法の規制を受ける一方で、毒劇法上の毒物・劇物に該当するものもあるため、一律に対象外とは判断しない。情報提供義務には、1回につき200mg以下の劇物の販売・授与など一定の例外がある | 毒物・劇物の該当性は、物質名だけでなく、濃度や製剤の形態も確認する必要がある |
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毒劇法では、物質名だけで該当性を判断しない
毒劇法では、同じ成分名であっても、濃度、製剤の形態、除外規定によって毒物・劇物への該当性が変わる場合があります。そのため、SDSを確認する際は、適用法令欄だけでなく、成分名、含有率、毒物又は劇物の別、除外規定をあわせて確認する必要があります。
同じ化学品が複数の法令の対象になる場合があります。たとえば、ある有機溶剤が安衛法の通知対象物であり、かつ化管法の第一種指定化学物質でもあるというケースは珍しくありません。SDSを受け取ったときは、「適用法令」欄を確認し、どの法令の対象に該当するかを把握することが出発点になります。
なお、化管法SDS制度に関しては、第二種指定化学物質もSDS制度の対象です。しかし、第二種指定化学物質はPRTR届出(排出量・移動量の届出)の対象ではありません。PRTR届出の対象となるかどうかの判断は、化管法SDS制度の対象かどうかとは独立して確認する必要があります。詳しくは第14回「PRTR対象物質とは何か」で整理しています。
4. SDSに記載すべき事項の違い
SDSはJIS Z 7253に基づく16項目の形式で作成されることが多いため、見た目は同じように見えます。しかし、法令上の要求事項を確認すると、安衛法、化管法、毒劇法では、対象物質、目的、必須記載事項が完全に同じではありません。
以下の表では、JIS Z 7253の16項目の並びを基準として、各法令の要求事項の特徴を整理します。あわせて、毒劇法独自の「毒物又は劇物の別」と、安衛法で通知事項として明示されている「想定される用途及び使用上の注意」も示します。
| 記載項目 | 安衛法 | 化管法 | 毒劇法 | 実務上の見方 |
|---|---|---|---|---|
| 化学品及び会社情報 (名称・通知者情報) |
○ | ○ | ○ | 3法すべてで求められる。緊急連絡先・製品名・会社名を確認する |
| 毒物又は劇物の別 (毒劇法独自の必須項目) |
ー | ー | ○ | 毒劇法の情報提供事項として規定(施行規則第13条の12)。毒物・劇物・特定毒物のいずれかが明示されているか確認する |
| 危険有害性の要約 | ○ | ○ | △ | GHSに基づく危険有害性クラス・区分・絵表示を確認する。安全な作業方法の出発点となる |
| 組成及び成分情報 | ○ | ○ | ○ | 成分名と含有率を確認。安衛法通知対象物・化管法指定化学物質・毒物劇物への該当性を把握する基本情報となる |
| 応急措置 | ○ | ○ | ○ | 緊急時対応手順に反映されているか確認。目・皮膚・吸入・誤飲それぞれの対応を把握する |
| 火災時の措置 | △ | ○ | ○ | 使用できる消火剤・禁止消火剤・爆発危険性を確認。消防設備の選定にも関係する |
| 漏出時の措置 | ○ | ○ | ○ | 漏えい時の立入禁止区域の設定・回収方法・排水路への流入防止などを漏えい対応手順に反映する |
| 取扱い及び保管上の注意 | ○ | ○ | ○ | 換気・静電気対策・混触危険物との隔離。毒劇法では保管場所の施錠・区分管理も確認する |
| ばく露防止及び保護措置 | △ | ○ | ○ | 管理濃度・ばく露限界値、必要な保護具(手袋・防毒マスク等)、局所排気装置の選定に直接使う重要な情報 |
| 物理的及び化学的性質 | ○ | ○ | ○ | 引火点・沸点・蒸気圧・溶解度を確認。リスクアセスメントや保管管理条件の検討に使う |
| 安定性及び反応性 | ○ | ○ | ○ | 混触危険物・分解生成物・加熱による危険性。保管区分の判断や緊急時対応に使う |
| 有害性情報 | ○ | ○ | ○ | 急性毒性・慢性毒性・発がん性・生殖毒性などを確認。リスクアセスメントとばく露防止策の根拠となる |
| 環境影響情報 | △ | ○ | △ | 化管法では環境保全の観点から明確に含まれる。水生毒性・難分解性を確認。漏えい・廃棄時の環境影響の把握にも使う |
| 廃棄上の注意 | △ | ○ | ○ | 廃液・容器の廃棄方法を確認。廃棄物の分類・処理方法の検討に使う |
| 輸送上の注意 | △ | ○ | ○ | 危険物の輸送区分(UN番号・危険品クラス等)を確認 |
| 適用法令 | ○ | ○ | △ | 毒劇法の情報提供事項としては明示されていないが、JIS Z 7253形式のSDSでは通常記載される。毒物・劇物該当性の確認には、適用法令欄だけでなく、成分名・含有量・毒物又は劇物の別を確認する |
| その他の情報 | ○ | ○ | △ | SDS作成日・改定日・版番号を確認。古いバージョンを使い続けていないか定期的に確認する |
| 想定される用途及び使用上の注意 (安衛法で通知事項として明示) |
○ | △ | △ | 安衛法の施行規則上の通知事項として明示されている。用途外使用のリスク把握や作業手順の根拠として活用する |
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毒劇法では「毒物又は劇物の別」の確認が特に重要
毒劇法に基づく情報提供事項(施行規則第13条の12)には、毒物又は劇物の別が含まれます。これはJIS Z 7253の16項目には直接対応する項目がなく、毒劇法固有の要求事項です。SDSを受け取ったとき、毒物・劇物が含まれる化学品については、この区分が明示されているかを確認してください。
5. JIS Z 7253との関係
JIS Z 7253は、GHSに基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法として、ラベル、作業場内の表示、SDSの形式を整理する国内規格です。SDSの実務では、JIS Z 7253に基づく16項目形式が広く使われています。
安衛法とJIS Z 7253の関係
JIS Z 7253形式でSDSを作成することで、安衛法上のSDS記載事項を体系的に整理しやすくなります。ただし、JIS Z 7253形式で作成すれば、対象物質の判定・提供義務・更新時の再通知義務まで自動的に満たすわけではありません。法令上の義務の確認は別途必要です。
化管法とJIS Z 7253の関係
化管法では、SDSの記載について、JIS Z 7253に適合するよう努めることが求められています。16項目形式のSDSで記載すべき内容を確認することが、化管法SDS制度の実務対応の基本となります。
毒劇法とJIS Z 7253の関係
毒劇法の情報提供事項(施行規則第13条の12)には、「毒物又は劇物の別」など、JIS Z 7253の16項目に直接対応しない要求事項が含まれています。JIS Z 7253形式のSDSを作成していても、毒劇法固有の記載事項が漏れていないかを別途確認する必要があります。
JIS Z 7253に準拠すれば、すべての法令要件を自動的に満たすわけではない
JIS Z 7253は有用な実務基準ですが、安衛法・化管法・毒劇法のそれぞれの法令上の要求事項とは完全には一致しません。特に毒劇法の「毒物又は劇物の別」は、JIS Z 7253の16項目には含まれていないため、毒物・劇物が含まれる化学品については個別の確認が必要です。
6. 罰則・行政措置の違い
SDSを提供しない場合の罰則や行政措置は、法令によって異なる
SDSに関する義務は、安衛法、化管法、毒劇法で定められていますが、罰則や行政措置のかかり方は同じではありません。特に、安衛法では令和7年改正により、危険性・有害性情報の通知義務違反に罰則が設けられることとなりました。一方、化管法では勧告・公表や報告徴収違反に対する過料が中心であり、毒劇法ではSDS情報提供義務違反そのものへの直接罰則は見当たりません。ただし、毒物・劇物については、登録、表示、譲渡手続、保管などに関する規制が重く、SDSだけを見て管理を終えるのは危険です。
| 法令 | SDS未提供・虚偽通知等への措置 | 整理のポイント |
|---|---|---|
| 安衛法 | 令和7年改正(令和7年法律第33号)により、化学物質の譲渡等実施者による危険性・有害性情報の通知義務違反に罰則が設けられることとなった。施行は公布後5年以内に政令で定める日。施行後の罰則水準は6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金とされている。 | 令和7年改正で罰則が追加されることとなったが、「施行は公布後5年以内に政令で定める日」であることに注意。現時点での施行状況は原典の政令を確認のこと |
| 化管法 | SDS提供義務違反は、主務大臣による勧告・公表の対象となる。また、報告徴収に応じない場合又は虚偽の報告をした場合は20万円以下の過料。 | 安衛法のような刑事罰とは制度上の整理が異なる。勧告・公表および過料が中心。SDS未提供そのものに直ちに刑事罰が科されるわけではない |
| 毒劇法 | 施行令第40条の9に基づく情報提供義務違反そのものへの直接罰則は見当たらない。ただし、毒劇法には、無登録営業(3年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金等)、表示義務違反(1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金等)、譲渡手続違反、保管規制違反などに関する重い罰則が別途設けられている。 | SDS情報提供義務違反そのものへの直接罰則は見当たらないという整理であり、「毒劇法に罰則がない」わけではない。毒劇法全体として見れば、登録・表示・譲渡・保管等に関する罰則は重い |
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安衛法の罰則施行時期について
令和7年改正(令和7年法律第33号)で設けられた危険性・有害性情報の通知義務違反に対する罰則は、「公布後5年以内に政令で定める日」から施行される規定です。実務対応を検討する際は、必ず原典の政令(施行日を定める政令)の最新状況をご確認ください。
7. 製造業の工場でSDSを見るときの確認ポイント
SDSを受け取ったとき、または工場内でSDSの管理状況を確認するときに、実務で見ておきたいポイントを整理します。
| # | 確認ポイント |
|---|---|
| 1 | 使用中の薬品リスト(化学品一覧)があるか |
| 2 | 各薬品の最新版SDSを入手しているか。古いバージョンを使い続けていないか |
| 3 | SDSの「適用法令」欄に、安衛法・化管法・毒劇法・消防法・廃掃法などの記載があるか |
| 4 | 「組成及び成分情報」欄で成分名と含有率が確認できるか |
| 5 | 安衛法の通知対象物・リスクアセスメント対象物に該当するか確認しているか |
| 6 | 化管法の第一種指定化学物質・第二種指定化学物質に該当するか確認しているか |
| 7 | 毒物・劇物・特定毒物に該当するか確認しているか。毒劇法では「毒物又は劇物の別」がSDSに明示されているか |
| 8 | SDSをもとにリスクアセスメントを実施しているか |
| 9 | 「ばく露防止及び保護措置」欄の情報が、保護具の選定・局所排気装置・換気・作業手順に反映されているか |
| 10 | 「応急措置」「火災時の措置」「漏出時の措置」が、緊急時対応手順に反映されているか |
| 11 | 工場内で小分けした容器に、化学品の名称や危険有害性情報が表示されているか。現地確認では、小分け容器の表示が抜けていないかも確認ポイントになる |
| 12 | 購買部門・環境安全部門・現場部門の間でSDS情報が共有されているか。入手したSDSが現場に届いているか |
| 13 | 製造工程や使用薬品が変更されたとき、SDSを見直しているか。変更後のリスクアセスメントも実施されているか |
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EHSコンプライアンスの確認では、SDSが入手されているかだけでなく、その情報が現場の作業管理・設備管理・緊急時対応につながっているかを見ることが重要です。SDSがファイルに保管されているだけで、現場の保護具や作業手順に反映されていないケースは、現場確認でしばしば見られます。
EHSコンプライアンスの確認(第7回)でも整理しているとおり、法令遵守は書類の整備だけでなく、現場での実際の運用まで確認することが重要です。
8. まとめ
SDSは、安衛法、化管法、毒劇法で共通して使われる化学物質の危険有害性情報の伝達手段です。しかし、対象物質、対象製品、記載事項、JIS Z 7253との関係、罰則や行政措置のかかり方は同じではありません。
SDSを受け取った事業者は、単にファイルに保管するだけでなく、どの法令の対象物質なのかを確認し、リスクアセスメント、保護具選定、保管管理、緊急時対応に反映する必要があります。
この記事のポイント
- SDSは安衛法・化管法・毒劇法の3法令がそれぞれ根拠を持つ。目的・対象・記載事項・罰則は同じではない
- 化管法にはPRTR制度とSDS制度の両方がある。PRTR届出対象の範囲と、化管法SDS対象の範囲は異なる
- 毒劇法では「毒物又は劇物の別」がSDSの情報提供事項として規定されている。JIS Z 7253の16項目には直接対応する項目がない
- JIS Z 7253に準拠すれば、すべての法令要件を自動的に満たすわけではない。特に毒劇法の独自項目に注意が必要
- 安衛法では令和7年改正で危険性・有害性情報の通知義務違反への罰則が設けられることとなった。施行は公布後5年以内に政令で定める日
- 化管法では、SDS提供義務違反は勧告・公表の対象。報告徴収違反は20万円以下の過料
- 毒劇法のSDS情報提供義務違反に直接罰則は見当たらないが、毒劇法全体として登録・表示・譲渡・保管等に関する重い罰則がある。SDSだけを見て管理を終えるのは不十分
SDSは、化学物質管理の入口です。入口で止まるのではなく、現場の作業、設備、保護具、教育、緊急時対応までつなげて初めて、実務上意味のある資料になります。
XI-GLOBEで支援できること
工場・事業場での化学物質管理の確認では、SDSが整備されているかだけでなく、リスクアセスメント・保護具選定・保管管理・緊急時対応への反映状況を、現場確認・書類確認・関係者インタビューを通じて確認します。クシィ・グローブ合同会社では、実際の現場で運用できる改善につなげることを重視した支援を行っています。
例えば、次のようなお困りごとはないでしょうか。
SDSは収集しているが、安衛法・化管法・毒劇法のどれに該当するかを正確に把握できていない。適用法令欄の確認も十分にできていない
SDSの情報がリスクアセスメントや保護具選定に反映されているかどうか、確認の仕方が分からない
安衛法の令和7年改正への対応や、化学物質管理者の実務体制の整備を進めたいが、どこから着手すればよいか分からない
まずは現状の管理状況の整理からご相談ください。
主な根拠法令・資料等
本記事で参照した主な法令・資料等は以下のとおりです。実務で判断する際は、必ず最新の原典をご確認ください。
労働安全衛生法関係
労働安全衛生法(第57条の2、第57条の3等)
化学物質の危険性・有害性情報の通知義務(SDS制度)の根拠条文。第57条の2でSDS通知義務・通知対象物・通知事項を定め、第57条の3でリスクアセスメント実施義務を定める。
労働安全衛生規則(第34条の2の4等)
SDS通知事項の詳細、通知の方法、更新・再通知義務等を定める。想定される用途及び当該用途における使用上の注意が通知事項として明示されている。
労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)の概要
化学物質の譲渡等実施者による危険性・有害性情報の通知義務違反への罰則新設の根拠。施行は公布後5年以内に政令で定める日。
化学物質等安全データシートについて(厚生労働省)
安衛法上のSDS制度の概要、対象物質、記載事項、GHSとの関係についての行政資料。
厚生労働省 職場のあんぜんサイト 表示・通知義務対象物質一覧
労働安全衛生法に基づくラベル表示・SDS交付・リスクアセスメントの対象物質を確認するための最新リスト。令和8年4月1日施行の改正により、令和8年6月現在の義務対象物質は2,316物質となっている。個別物質の該当性確認に用いる。将来施行予定分を含む資料と、現在施行済みの対象物質一覧を混同しないよう注意が必要。
化管法関係
特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化管法・第14条等)
化管法SDS制度の根拠条文。第14条で指定化学物質等取扱事業者による情報提供義務を定める。化管法にはPRTR制度(第5条)とSDS制度(第14条)の両方が含まれる。
特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律施行令
第一種指定化学物質、第二種指定化学物質、対象製品の含有率要件、固形物・密封製品・一般消費者向け製品・再生資源等の適用除外を確認するための根拠法令。
特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律施行規則
化管法SDS制度における情報提供事項、情報提供の方法、JIS Z 7253への適合努力規定等を確認するための根拠法令。
化管法SDS制度の概要(経済産業省)
化管法SDS制度の対象物質・対象製品・情報提供事項・罰則に関する行政資料。
毒物及び劇物取締法関係
毒物及び劇物取締法(第1条等)
毒物・劇物・特定毒物の定義、登録制度、表示義務、譲渡手続、保管・廃棄規制、事故時措置義務等の根拠法令。毒物は別表第一、劇物は別表第二、特定毒物は別表第三で定められる。
毒物及び劇物指定令(第1条、第2条、第3条)
毒物及び劇物取締法の委任に基づき、毒物・劇物・特定毒物を具体的に指定する政令。物質名、製剤、濃度による除外規定等を確認するために用いる。
毒物及び劇物取締法施行令(第40条の9等)
毒物劇物営業者等が毒物又は劇物を販売・授与する際の情報提供義務などを定める。SDSに相当する情報提供義務の根拠として確認する。
毒物及び劇物取締法施行規則(第13条の12等)
情報提供事項の詳細を定める。「毒物又は劇物の別」をはじめとする情報提供すべき事項が列挙されている。
JIS規格・その他
JIS Z 7253「GHSに基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法ーラベル,作業場内の表示及び安全データシート(SDS)」
SDSの16項目形式の根拠となる国内規格。GHSに基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法を定める。各法令とJIS規格の要求事項は完全には一致しないことに注意が必要。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の化学品・事業所・設備への法令適用を断定するものではありません。SDSに関する義務の内容、対象物質の該当性、記載事項の要否、罰則の適用状況は、適用法令、物質の性状・含有率・製品形態、事業者の業種・規模、所轄行政機関の判断等によって異なります。本記事の内容を実務に適用する際は、必ず原典の法令・通達・JIS規格等を確認の上、必要に応じて所轄の都道府県労働局・行政機関または専門家にご相談ください。本記事の情報を利用したことによるいかなる損害についても、クシィ・グローブ合同会社は責任を負いかねます。