工場に設置されるボイラーは、一つの設備でありながら、労働安全衛生法令、大気汚染防止法、消防法・火災予防条例、環境関連条例といった複数の法令・条例で、それぞれ異なる目的と判定軸によって確認が必要になる設備です。
労働安全衛生法令では、最高使用圧力・伝熱面積・内容積といった設備仕様をもとに確認します。大気汚染防止法では、ばい煙発生施設として燃料の燃焼能力や重油換算値を確認します。消防法・火災予防条例関係では、火を使用する設備等として位置・構造・管理の観点から確認します。環境関連条例では、大気汚染防止法上は非該当でも、自治体独自の規制対象となる場合があります。
本記事では、工場の環境安全部門・設備管理部門・EHS法令遵守確認の担当者に向けて、これらの確認ポイントを整理します。
この記事で分かること
- 安衛令第1条第3号「ボイラー」・第4号「小型ボイラー」の定義と、実務上「簡易ボイラー」と呼ばれるものの位置づけ
- ボイラー・小型ボイラー・簡易ボイラーの主な義務の違いと構造規格の区分
- 大気汚染防止法上のばい煙発生施設としてのボイラーの判定要素と、令和4年改正の注意点
- 消防法・火災予防条例関係での確認観点と、燃料タンク・危険物との関係
- 環境関連条例(熊本県・東京都の例)でのボイラーの確認ポイント
- 現地調査で確認すべき主な資料の一覧
1. 労働安全衛生法令上の「ボイラー」の定義
労働安全衛生法令における「ボイラー」は、すべての蒸気ボイラーや温水ボイラーを指すわけではありません。安衛令第1条第3号は、「蒸気ボイラー及び温水ボイラーのうち、次に掲げるボイラー以外のものをいう」と定めており、同号イからトに掲げられるごく小規模な蒸気ボイラー・温水ボイラーを除外した上で、残る設備を「ボイラー」と定義しています。
ボイラーの定義(労働安全衛生法施行令第1条第3号)
蒸気ボイラー及び温水ボイラーのうち、次に掲げるボイラー以外のものをいう(安衛令第1条第3号)。つまり、同号イからトに規定された除外基準に該当する設備を除いたものが、安衛法令上の「ボイラー」です。
では、どのような設備が安衛法令上の「ボイラー」になるのか
安衛法令上の区分は、設備名称だけで決めるのではなく、まず蒸気ボイラー・温水ボイラーに該当するかを確認し、次に安衛令第1条第3号イ〜トの小規模除外基準に該当するかを確認します。ここに該当すれば、実務上「簡易ボイラー」と呼ばれる区分になります(法令上の定義語ではありません)。該当しない場合は安衛令上の「ボイラー」に入ります。そのうえで、安衛令第1条第4号イ〜ホの小型ボイラー基準に該当すれば「小型ボイラー」、該当しなければ本記事でいう通常規模の「ボイラー」として整理します。
ここからは、条文番号ではなく、設備仕様をもとに区分を確認します。確認する主な項目は、設備の種類、ゲージ圧力、伝熱面積、内容積、胴の内径・長さ、大気開放の蒸気管またはU形立管の有無です。自社設備の銘板、仕様書、ボイラー明細書を手元に置き、該当する設備種類のカードを確認してください。
安衛法令上のボイラー区分の判定フロー
このフローでは、「安衛令第1条第3号イ〜トに該当するか」という条文番号から考えるのではなく、設備仕様の数値から確認します。まず設備の種類を選び、次にゲージ圧力、伝熱面積、内容積、胴の内径・長さなどを当てはめて、簡易ボイラー相当、小型ボイラー、通常規模のボイラーの順に整理します。このフローは区分の当たりを付けるためのものです。最終的な判断には、条文原典の確認および所轄の労働基準監督署等への確認が必要です。
STEP 1
設備の種類を確認する
蒸気ボイラー
→ カード A へ
温水ボイラー
→ カード B へ
貫流ボイラー
→ カード C へ
それ以外の設備
このフローの対象外
圧力容器・加熱設備・温水発生装置など、蒸気・温水・貫流ボイラーに該当しない設備はこのフローの対象外です。別の設備区分として確認してください。
カード A
蒸気ボイラーの場合
① 以下のいずれかに該当する → 簡易ボイラー相当(実務上の呼称)
ゲージ圧力 0.1MPa以下 かつ 伝熱面積 0.5㎡以下
根拠:安衛令第1条第3号イ
ゲージ圧力 0.1MPa以下 かつ 胴の内径 200mm以下 かつ 長さ 400mm以下
根拠:安衛令第1条第3号イ
ゲージ圧力 0.3MPa以下 かつ 内容積 0.0003㎥(0.3L)以下
根拠:安衛令第1条第3号ロ
伝熱面積 2㎡以下 かつ 大気に開放した内径 25mm以上 の蒸気管を取り付けたもの
根拠:安衛令第1条第3号ハ
伝熱面積 2㎡以下 かつ ゲージ圧力 0.05MPa以下 かつ 内径 25mm以上 のU形立管を蒸気部に取り付けたもの
根拠:安衛令第1条第3号ハ
→ 安衛令上の「ボイラー」から除外される設備(簡易ボイラー相当)
安衛令第13条第3項第25号により、簡易ボイラー等構造規格の対象となります。「簡易ボイラー」は法令上の定義語ではなく実務上の呼称です。
② ①に非該当かつ以下のいずれかに該当する → 小型ボイラー
ゲージ圧力 0.1MPa以下 かつ 伝熱面積 1㎡以下
根拠:安衛令第1条第4号イ
ゲージ圧力 0.1MPa以下 かつ 胴の内径 300mm以下 かつ 長さ 600mm以下
根拠:安衛令第1条第4号イ
伝熱面積 3.5㎡以下 かつ 大気に開放した内径 25mm以上 の蒸気管を取り付けたもの
根拠:安衛令第1条第4号ロ
伝熱面積 3.5㎡以下 かつ ゲージ圧力 0.05MPa以下 かつ 内径 25mm以上 のU形立管を蒸気部に取り付けたもの
根拠:安衛令第1条第4号ロ
→ 小型ボイラー(安衛令上の「ボイラー」のうち一定規模以下のもの)
設置報告、個別検定、定期自主検査の確認が必要です。
③ ①②いずれにも非該当 → 通常規模のボイラー
→ 通常規模のボイラー
設置届、ボイラー検査証、性能検査などの管理対象となる可能性があります。
カード B
温水ボイラーの場合
① 以下のいずれかに該当する → 簡易ボイラー相当(実務上の呼称)
ゲージ圧力 0.1MPa以下 かつ 伝熱面積 4㎡以下(木質バイオマス温水ボイラーは伝熱面積 16㎡以下)
根拠:安衛令第1条第3号ニ
木質バイオマス温水ボイラーで、ゲージ圧力 0.6MPa以下 かつ 最高使用温度 100℃以下 かつ 伝熱面積 32㎡以下
根拠:安衛令第1条第3号ホ
→ 安衛令上の「ボイラー」から除外される設備(簡易ボイラー相当)
安衛令第13条第3項第25号により、簡易ボイラー等構造規格の対象となります。「簡易ボイラー」は法令上の定義語ではなく実務上の呼称です。
② ①に非該当かつ以下のいずれかに該当する → 小型ボイラー
ゲージ圧力 0.1MPa以下 かつ 伝熱面積 8㎡以下
根拠:安衛令第1条第4号ハ
ゲージ圧力 0.2MPa以下 かつ 伝熱面積 2㎡以下
根拠:安衛令第1条第4号ニ
→ 小型ボイラー(安衛令上の「ボイラー」のうち一定規模以下のもの)
設置報告、個別検定、定期自主検査の確認が必要です。
③ ①②いずれにも非該当 → 通常規模のボイラー
→ 通常規模のボイラー
設置届、ボイラー検査証、性能検査などの管理対象となる可能性があります。
カード C
貫流ボイラーの場合
① 以下のいずれかに該当する → 簡易ボイラー相当(実務上の呼称)
ゲージ圧力 1MPa以下 かつ 伝熱面積 5㎡以下
根拠:安衛令第1条第3号ヘ
内容積 0.004㎥以下 かつ 最高使用ゲージ圧力(MPa)×内容積(㎥) ≤ 0.02
根拠:安衛令第1条第3号ト
→ 安衛令上の「ボイラー」から除外される設備(簡易ボイラー相当)
安衛令第13条第3項第25号により、簡易ボイラー等構造規格の対象となります。「簡易ボイラー」は法令上の定義語ではなく実務上の呼称です。
② ①に非該当かつ以下に該当する → 小型ボイラー
ゲージ圧力 1MPa以下 かつ 伝熱面積 10㎡以下
根拠:安衛令第1条第4号ホ
→ 小型ボイラー(安衛令上の「ボイラー」のうち一定規模以下のもの)
設置報告、個別検定、定期自主検査の確認が必要です。
③ ①②いずれにも非該当 → 通常規模のボイラー
→ 通常規模のボイラー
設置届、ボイラー検査証、性能検査などの管理対象となる可能性があります。
このフローについての注記
このフローは、設備区分の当たりを付けるためのものです。各数値基準が設備の実際の仕様に適用できるかどうかは、設備の構造・使用条件・設置状況によって異なります。最終的な判断には、安衛令の条文原典の確認および所轄の労働基準監督署等への確認が必要です。
「簡易ボイラー」は実務上の呼称であり、法令上の定義語ではありません。除外基準に該当しても無管理でよいわけではなく、安衛令第13条第3項第25号による構造規格の対象となります。小型ボイラーは「ボイラーではない設備」ではなく、安衛令上の「ボイラー」のうち規模が一定以下のものです。
なお、判定フローで示した簡易ボイラー相当の数値基準は、労働安全衛生法施行令第1条第3号イ〜トを設備仕様ベースで整理したものです。実務で判断する際は、必ず同条文の原典を確認してください。
ボイラー則との関係
「ボイラー及び圧力容器安全規則」(ボイラー則)は、安衛令第1条第3号の「ボイラー」および関連する設備に関して、設置届・検査証・性能検査・定期自主検査・ボイラー技士の配置・作業主任者の選任などを定めています。どの条文が適用されるかは、設備の区分(ボイラー・小型ボイラー・簡易ボイラー)によって異なります。
2. 小型ボイラーの位置づけ
小型ボイラーは、安衛令第1条第3号の「ボイラー」のうち、安衛令第1条第4号に掲げる一定規模以下のものです。つまり、「ボイラーではない設備」ではなく、安衛令上のボイラーの一区分です。
小型ボイラーに該当するかは、前章の設備種類別判定フローで確認できます。通常規模のボイラーより規制は緩やかですが、設置報告、個別検定、定期自主検査、小型ボイラー取扱業務特別教育などの確認が必要になるため、「小さいから管理不要」と考えるべきではありません。
3. 「簡易ボイラー」という実務上の呼称
「簡易ボイラー」は、労働安全衛生法施行令第1条上の定義語ではありません。実務上は、安衛令第1条第3号イ〜トに掲げられ、同号の「ボイラー」から除外される小規模な蒸気ボイラー・温水ボイラーを指して使われることがあります。
ただし、安衛令第13条第3項第25号により、これらの設備は簡易ボイラー等構造規格の対象として位置づけられています。したがって、「ボイラーに該当しないから何も確認しなくてよい」という意味ではありません。実務では、銘板、仕様書、構造規格への適合、なぜ簡易ボイラー相当と判断したのかを記録で説明できる状態にしておくことが重要です。
4. ボイラー・小型ボイラー・簡易ボイラーの違い
前章までの内容を踏まえると、簡易ボイラー、小型ボイラー、通常規模のボイラーは、単純に「大・中・小」と並ぶものではありません。まず小規模設備を簡易ボイラー相当として整理し、残った安衛令上のボイラーの中から小型ボイラーを切り分けます。主な違いを整理すると、以下のとおりです。
| 項目 | ボイラー | 小型ボイラー | 簡易ボイラー |
|---|---|---|---|
| 法令上の位置づけ | 安衛令第1条第3号の「ボイラー」(小型ボイラーを除く規模のもの) | 安衛令第1条第3号の「ボイラー」のうち、第4号イ〜ホに該当するもの | 安衛令第1条第3号の定義から除外されるもの(安衛令第13条第3項第25号の対象設備)。法令上の定義語ではなく実務上の呼称。 |
| 主な根拠条文 | 安衛令第1条第3号、ボイラー及び圧力容器安全規則 | 安衛令第1条第4号、ボイラー及び圧力容器安全規則 | 安衛令第13条第3項第25号、簡易ボイラー等構造規格 |
| 対象となる設備のイメージ | 工場・事業場に設置される一般的な規模以上の蒸気・温水ボイラー、貫流ボイラー(安衛令第1条第3号イ〜トのいずれの除外基準にも非該当) | 比較的小型だが安衛令第1条第3号の除外基準を超える蒸気・温水ボイラー・貫流ボイラー(安衛令第1条第4号イ〜ホのいずれかに該当) | 安衛令第1条第3号イ〜トの除外基準のいずれかに該当するごく小規模な蒸気ボイラー・温水ボイラー |
| 主な判定要素 | 最高使用圧力、伝熱面積、内容積、胴の内径・長さ(第1条第3号イ〜トのいずれにも非該当) | 最高使用圧力、伝熱面積、内容積、胴の内径・長さ(第1条第4号イ〜ホのいずれかに該当) | 安衛令第1条第3号イ〜トのいずれかに該当するかどうか |
| 設置時の手続 | 設置届(所轄労働基準監督署長への提出)の確認が必要 | 設置報告(所轄労働基準監督署長への提出)の確認が必要 | ボイラー則上の設置届・設置報告の対象とは異なる扱い。設備仕様・銘板・構造規格への適合確認が必要。 |
| 検査証 | 検査証の交付を受ける必要あり、有効期間の管理が必要 | 個別検定合格の表示、刻印又は銘板等の確認が必要 | ボイラー検査証の制度とは異なる扱い。簡易ボイラー等構造規格への適合確認・銘板・仕様書の確認が中心。 |
| 性能検査 | 有効期間ごとの性能検査の管理が必要 | ボイラー検査証の有効期間更新を前提とする性能検査制度とは異なる扱い | ボイラー検査証の有効期間更新を前提とする性能検査制度とは異なる扱い |
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表に関する注記
実際の適用関係は、設備の種類、最高使用圧力、伝熱面積、内容積、設置状況等によって変わります。設備仕様書や銘板の確認、所轄労働基準監督署等への確認が重要です。上記はあくまで概要の整理であり、個別設備への適用を断定するものではありません。
5. 大気汚染防止法上のボイラー
大気汚染防止法では、ボイラーは大気環境保全の観点から「ばい煙発生施設」の一つとして確認されます。労働安全衛生法令とは判定軸が異なる点に注意が必要です。
大防法施行令別表第一の一の項におけるボイラー
大気汚染防止法施行令別表第一では、ばい煙発生施設としてボイラー(熱風ボイラーを含む。熱源として電気又は廃熱のみを使用するものを除く。)が規定されています。
規模要件:燃料の燃焼能力が重油換算で1時間当たり50リットル以上であること
令和4年改正による伝熱面積要件の廃止
令和4年10月1日施行の大気汚染防止法施行令改正により、従来のボイラーに関する伝熱面積要件は廃止され、燃料の燃焼能力を重油換算で確認する形に整理されています。
古い法的要求事項一覧表への注意
改正前は「伝熱面積10平方メートル以上」という要件が使われていました。古い法的要求事項一覧表、設備管理台帳、届出判定メモには旧要件が残っている可能性があります。現行の施行令別表第一を確認することをお勧めします。
安衛法令と大防法の判定軸の違い
| 法令体系 | 主な判定軸 |
|---|---|
| 労働安全衛生法令 | 最高使用圧力、伝熱面積、内容積、胴の内径等(設備の規模・構造) |
| 大気汚染防止法 | 燃料の燃焼能力(重油換算1時間当たり50L以上) |
安衛法令上のボイラーに該当しない規模の設備であっても、燃料の燃焼能力が重油換算50L/h以上であれば大防法上のばい煙発生施設に該当する場合があります。逆に、安衛法令上のボイラーであっても、電気や廃熱のみを熱源とする場合は大防法の対象外となります。両法令の判定軸を混同しないことが重要です。
6. 環境関連条例で対象となるボイラー
大気汚染防止法上はばい煙発生施設に該当しない小規模なボイラーであっても、所在地の自治体が独自に定める環境関連条例によって、届出や排出基準の対象となる場合があります。
熊本県の例
例えば熊本県では、熊本県生活環境の保全等に関する条例施行規則において、大気汚染防止法の基準である重油換算50L/h以上を下回る、重油換算25L/h以上50L/h未満のボイラーを、条例上のばい煙発生施設として扱う例があります。
東京都の例
例えば東京都では、都民の健康と安全を確保する環境に関する条例において、燃焼能力ではなく伝熱面積を判定の観点とし、伝熱面積5平方メートル以上のボイラーを有する事業場を指定作業場の該当判断に用いる例があります。なお、硫黄分0.1パーセント以下のガス専焼の場合は伝熱面積10平方メートル以上が基準となる例があります。
重要:これらは特定自治体の例です
熊本県・東京都の例は全国一律の制度ではありません。条例による対象範囲・判定軸・届出手続・排出基準・測定記録義務は自治体によって異なります。設備所在地の条例の確認が必要です。
7. 消防法・火災予防条例関係で確認すべきボイラー
消防法関係では、消防法にボイラー独自の定義があるものとして確認するのではなく、消防法第9条に基づく火災予防条例の体系の中で確認します。消防法第9条は、火を使用する設備又は火災の発生のおそれのある設備の位置・構造・管理について、政令で定める基準に従い、市町村条例で定める体系を採っています。
火災予防条例(例)におけるボイラーの確認観点
消防庁が示す火災予防条例(例)では、ボイラーは火を使用する設備として扱われ、位置・構造・管理の確認事項が定められています。主な確認観点として、以下が挙げられます。
- 位置(可燃物・可燃性構造物との離隔距離等)
- 構造(不燃材料等の使用状況)
- 蒸気管・給湯管等の遮熱
- 安全弁・逃がし弁等の安全装置の状況
- 管理状況(適切な使用・点検の実施)
また、条例(例)では、ボイラー等が設置届の対象として扱われる場合があります。ただし、具体的な届出対象の範囲、届出時期、様式、消防署の検査の有無は、自治体の火災予防条例や消防本部の運用によって異なります。実務では、管轄消防署への確認が必要です。
全国一律ではありません
「消防法でボイラーが全国一律にこの条件で届出対象となる」という理解は正確ではありません。火災予防条例は各自治体が定めるものであり、要件・届出先・手続は条例の内容と所轄消防本部の運用によって異なります。設備の所在地の条例と管轄消防署への確認が必要です。
燃料タンク・危険物との関係
ボイラーの燃料として重油・灯油・軽油などを使用する場合、燃料タンクや配管、少量危険物・危険物貯蔵所の取扱いについても確認が必要です。消防法上の指定数量との関係、貯蔵・取扱いの届出要否なども、燃料の種類・保管数量に応じて確認します。
8. 法令体系ごとの横断比較
ボイラーに関係する主な法令体系の確認観点を横断的に整理すると、以下のとおりです。
| 法令・条例体系 | 主な規制目的 | ボイラーの位置づけ | 主な判定要素 | 主な手続・確認事項 |
|---|---|---|---|---|
| 労働安全衛生法令 | 破裂等による危険防止 | ボイラー・小型ボイラー・簡易ボイラーの区分 | 最高使用圧力、伝熱面積、内容積 | 設置届・設置報告、検査証・性能検査、定期自主検査、資格・作業主任者 |
| 大気汚染防止法 | 大気環境保全 | ばい煙発生施設 | 燃料の燃焼能力(重油換算50L/h以上) | ばい煙発生施設の届出、ばい煙測定・記録 |
| 環境関連条例 | 自治体独自の大気環境保全 | 条例上のばい煙発生施設等 | 条例により異なる(重油換算値・伝熱面積等) | 条例上の届出・排出基準の確認、測定・記録義務の確認 |
| 消防法・火災予防条例関係 | 火災予防 | 火を使用する設備等 | 設備の種類・規模・燃料(自治体条例により異なる) | 設置届(条例による)、位置・構造・管理の確認、燃料タンク・危険物の確認 |
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9. 現地調査で確認すべき資料
ボイラーに関するEHS法令遵守状況を現地で確認する際は、以下の資料を対象に確認します。
| 法令体系・確認観点 | 現地で確認すべき主な資料・情報 |
|---|---|
| 設備仕様の確認 | 銘板、仕様書、ボイラー明細書、最高使用圧力、伝熱面積、内容積、燃料の種類、燃料の燃焼能力、重油換算値、定格出力 |
| 労働安全衛生法令関係 | ボイラー検査証、設置届又は設置報告の控え、定期自主検査記録、性能検査記録、作業主任者選任記録、ボイラー技士等の資格証、特別教育記録 |
| 大気汚染防止法関係 | ばい煙発生施設届出書の控え、ばい煙測定結果、排出口・煙突・排ガス処理設備に関する資料 |
| 環境関連条例関係 | 条例上の届出書の控え、ばい煙測定結果、自治体との協議記録、燃料使用量の記録 |
| 消防法・火災予防条例関係 | 火を使用する設備等の設置届の控え、燃料タンク・少量危険物関係資料、消防署との協議記録、離隔距離・安全装置に関する確認資料 |
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資料確認上の重要なポイント
これらの資料は、すべてのボイラーで必ず存在するものではありません。実際には設備の規模・燃料・設置場所・所在地の条例により必要書類が異なります。重要なのは、なぜ該当するのか、またはなぜ該当しないのかを、銘板・仕様書・届出書・行政確認記録などで説明できる状態にしておくことです。
10. まとめ
ボイラーは、法令体系ごとに異なる目的と判定軸で確認が必要な設備です。
安衛法令上の区分は、設備仕様(最高使用圧力・伝熱面積・内容積等)をもとに確認します。大防法では燃料の燃焼能力(重油換算)、環境関連条例では自治体独自の基準、消防法・火災予防条例関係では位置・構造・管理がそれぞれ判定軸となり、法令体系ごとに確認の観点が異なります。
この記事のポイント
- 安衛法令上の「ボイラー」は定義上の除外基準があり、世間一般のボイラー全部を指すわけではない。小型ボイラーはボイラーの一区分であり、「簡易ボイラー」は法令上の定義語ではなく実務上の呼称
- 安衛法令と大防法では判定軸が異なる。安衛法令は圧力・伝熱面積・内容積、大防法は燃料の燃焼能力(重油換算50L/h以上)
- 令和4年改正で大防法の旧・伝熱面積要件は廃止。古い法的要求事項一覧表、設備管理台帳、届出判定メモを使用している場合は注意が必要
- 大防法上は非該当でも、熊本県・東京都のような環境関連条例で届出対象となる場合がある。所在地の条例確認が必要
- 消防法・火災予防条例関係では、消防法にボイラー独自の定義があるものとして確認するのではなく、火を使用する設備等として条例の体系で確認する。届出要件は自治体によって異なる
ボイラーを管理する際は、設備名称だけで判断せず、最高使用圧力・伝熱面積・内容積・燃料の燃焼能力・重油換算値・燃料タンク・所在地条例を横断的に確認することが重要です。また、該当しないと判断した場合でも、その判断根拠を記録として残しておくことが、EHSコンプライアンス管理上重要です。
なお、ボイラーは第一種圧力容器とも区別が必要な設備です。蒸気や熱媒を他の設備から受け入れる設備が第一種圧力容器に該当する場合など、設備体系全体での確認も求められます。
工場・事業場のEHSコンプライアンスを、現場で確認しませんか
ボイラーのように複数の法令にまたがって確認が必要な設備は、法令体系ごとの判定軸の違いを整理しながら、現地で設備仕様・届出書類・検査記録を一つひとつ確認することが重要です。クシィ・グローブ合同会社では、現場確認・書類確認・関係者インタビューを通じて、EHS法令遵守上の管理状況を整理し、自社で継続できる管理体制づくりを支援しています。
例えば、次のようなお困りごとはないでしょうか。
工場内のボイラーについて、安衛法令上の区分・届出・検査証・作業主任者の管理状況を一度整理して確認したい
大気汚染防止法上のばい煙発生施設として届出が必要かどうか、令和4年改正後の基準で確認したい
消防署への届出や環境関連条例への対応状況も含めて、ボイラー周りの法令管理を横断的に整理したい
まずは現状の設備状況や管理体制の整理からご相談ください。
主な根拠法令・告示・通達等
本記事で参照した主な条文・通達等は以下のとおりです。実務で判断する際は、必ず最新の原典をご確認ください。
労働安全衛生法令
労働安全衛生法
ボイラー等に係る規制の根拠法令。
労働安全衛生法施行令
第1条第3号(ボイラーの定義)、第1条第4号(小型ボイラーの定義)、第13条第3項第25号(いわゆる「簡易ボイラー」の規定)。ボイラーの定義と区分の基準となる中心条文。
ボイラー及び圧力容器安全規則
設置届・設置報告、検査証・性能検査、定期自主検査、作業主任者の選任・資格等を定める。
ボイラー構造規格
安衛令第1条第3号のボイラーに適用される構造規格。
小型ボイラー及び小型圧力容器構造規格
安衛令第1条第4号の小型ボイラーに適用される構造規格。
簡易ボイラー等構造規格
安衛令第13条第3項第25号に規定されるいわゆる「簡易ボイラー」に適用される構造規格。
大気汚染防止法関係
大気汚染防止法
ばい煙発生施設の届出・規制の根拠法令。
大気汚染防止法施行令(別表第一の一の項)
ばい煙発生施設としてのボイラー(熱風ボイラーを含む。電気・廃熱のみを熱源とするものを除く)の規模要件:燃料の燃焼能力が重油換算1時間50リットル以上。
大気汚染防止法施行規則
ばい煙発生施設の届出様式・測定方法等の詳細を定める。
大気汚染防止法施行令の一部を改正する政令(令和4年10月1日施行)
ボイラーのばい煙発生施設の規模要件について、伝熱面積要件が廃止され、燃料の燃焼能力(重油換算)に一本化された改正。現行の基準を確認するための参照資料。
消防法・火災予防条例関係
消防法(第9条)
火を使用する設備・器具等の位置・構造・管理の基準を市町村条例に委ねる根拠条文。
火災予防条例(例)(消防庁)
消防庁が示す火災予防条例の例。実際の届出要件・手続は各自治体の火災予防条例と所轄消防本部の運用による。
対象火気設備等の位置、構造及び管理に関する条例の制定に関する基準を定める省令(総務省令)及び関連告示
火災予防条例(例)の基準となる省令・告示。各自治体の条例はこれに従い定められている。
環境関連条例(参考・特定自治体の例)
熊本県生活環境の保全等に関する条例・同施行規則
重油換算25L/h以上50L/h未満のボイラーを条例上のばい煙発生施設として扱う例。熊本県の例であり、全国共通ではない。
都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(東京都環境確保条例)
伝熱面積5平方メートル以上(ガス専焼で硫黄分0.1%以下の場合は10平方メートル以上)のボイラーを有する事業場を指定作業場の判断に用いる例。東京都の例であり、全国共通ではない。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の設備・業務・作業場への法令適用を断定するものではありません。ボイラーの安衛法令上の区分判断、大気汚染防止法上の届出要否、消防法・火災予防条例上の届出要否、環境関連条例上の対象要否は、対象設備の仕様、最高使用圧力、伝熱面積、内容積、燃料の種類・燃焼能力、設置場所、所在地の条例、所轄行政機関の判断等によって異なります。本記事の内容を実務に適用する際は、必ず原典の法令・通達を確認の上、必要に応じて所轄の労働基準監督署・都道府県・消防署または専門家にご相談ください。本記事の情報を利用したことによるいかなる損害についても、クシィ・グローブ合同会社は責任を負いかねます。