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実務担当者向けコラム 第10回 労働安全衛生 高圧ガス設備

第一種圧力容器とは何か?

ボイラー・各圧力容器・高圧ガス設備の違いと、液化窒素CEで確認すべき作業主任者の選任・掲示

掲載:2026年5月10日 / シリーズ:製造業のためのEHS法令用語ノート

製造業の工場には、蒸気や高圧ガス、熱媒を利用するさまざまな設備が存在します。環境安全担当者や設備管理担当者の中には、「この設備は高圧ガス保安法の対象だから、労働安全衛生法は関係ない」と考えている方もいるかもしれません。

しかし、その認識は、作業主任者の選任漏れなどの法令違反につながる可能性があります。

本記事では、工場の法令遵守実務を担う方に向けて、第一種圧力容器の法令上の定義、ボイラーや他の圧力容器・高圧ガス設備との違い、そして現場で確認すべきポイントを整理します。

この記事で分かること

  • 第一種圧力容器の法令上の定義(労働安全衛生法施行令第1条第5号)
  • ボイラー・小型圧力容器・第二種圧力容器・高圧ガス設備との区分の違い(比較表付き)
  • 液化窒素CEなどの高圧ガス設備で第一種圧力容器の確認が必要になる理由
  • ボイラー則第125条の適用除外の範囲と、作業主任者選任・掲示義務との関係
  • 現地調査で確認すべき4つのポイント

1. 第一種圧力容器とは

労働安全衛生法施行令第1条第5号において、第一種圧力容器は次のいずれかの性質を持つ容器として定義されています。ただし、ゲージ圧力が0.1MPa以下で内容積が0.04m³以下のものなど、一定の小規模なものは除かれます。

蒸気その他の熱媒を受け入れ、または蒸気を発生させて、固体または液体を加熱する容器

容器内における化学反応、原子核反応その他の反応によって蒸気が発生する容器

容器内の液体の成分を分離するため、当該液体を加熱し、その蒸気を発生させる容器

大気圧における沸点を超える温度の液体を、その内部に保有する容器

定義を読む際の注意点

単に「圧力がかかる容器」だから第一種圧力容器になるわけではありません。加熱・反応・蒸発・蒸留・高温液体の保有といった、容器の用途や内部状態を確認することが必要です。設備の名称ではなく、法令上の定義に照らした確認が実務上の出発点になります。

2. どのような設備が該当するのか

第一種圧力容器に該当し得る設備として、工場では以下のようなものが挙げられます。

  • オートクレーブ
  • 反応器
  • 蒸留器
  • 蒸発器
  • 滅菌器
  • 蒸煮器
  • 殺菌機
  • フラッシュタンク
  • 脱気器
  • スチームアキュムレータ

設備名称だけで判断しないこと

これらの名称で呼ばれる設備が常に第一種圧力容器に該当するとは限りません。第一種圧力容器に該当するかどうかは、設備の仕様、内容積、圧力、温度、用途、適用法令により確認が必要です。

3. 区分の整理:ボイラー・各圧力容器・高圧ガス設備の比較

ボイラー、第一種圧力容器、小型圧力容器、第二種圧力容器、高圧ガス設備はそれぞれ異なる法令上の定義と規制体系を持ちます。以下の比較表を参考に、自工場の設備がどの区分に該当するかを確認してください。

区分 主な見方 代表例 実務上の確認ポイント
ボイラー 火気・電気等で水または熱媒を加熱し、大気圧超の蒸気・温水を発生させて他に供給する装置 蒸気ボイラー、温水ボイラー、貫流ボイラー ボイラー技士の配置、性能検査、定期自主検査、設置届
第一種圧力容器 蒸気・熱媒の受入や発生、化学反応による蒸気発生、液体成分の分離のための加熱、大気圧における沸点超の高温液体の保有 オートクレーブ、反応器、蒸留器、蒸発器、脱気器 作業主任者の選任・掲示、適用除外の確認、規模・用途の確認
小型圧力容器 第一種圧力容器の性質を有するが、圧力・内容積・寸法が一定の小規模な範囲に収まるもの 小型のオートクレーブ等(規模要件による) 第一種圧力容器の除外要件確認、型式検定証票の確認
第二種圧力容器 第一種圧力容器に非該当で、ゲージ圧力0.2MPa以上の気体を保有する容器(一定の内容積以上) 圧縮空気タンク、エアレシーバー 型式検定証票の確認、取扱説明書・点検記録の確認
高圧ガス設備 高圧ガス保安法の規制対象となる設備。労働安全衛生法の定義と重複することがある 液化窒素CE、液化酸素CE、高圧ガス配管・容器設備 労働安全衛生法令の確認も別途必要。ボイラー則第125条の適用除外範囲の確認

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各区分の該当性は、設備の仕様、内容積、圧力、温度、用途、適用法令により確認が必要です。上表はあくまで実務上の参考であり、個別設備への適用を断定するものではありません。

4. ボイラーとの違い

ボイラーは、火気や電気などを用いて水や熱媒を加熱し、大気圧を超える圧力の蒸気や温水を発生させて他に供給する装置です。

一方、第一種圧力容器は、他の設備から蒸気や熱媒を受け入れて加熱を行うもの、自らの内部での化学反応や分離により蒸気を発生させるもの、あるいは大気圧における沸点を超える温度の液体を保有する容器です。

両者は「蒸気や温水を発生させて他に供給するかどうか」だけでなく、加熱の方法、蒸気発生のメカニズム、内部に保有する流体の状態といった法令上の判断軸によって区分されています。設備の設置や届出の要否を判断する際には、法令上の定義をそれぞれ確認することが必要です。

5. 小型圧力容器との違い

小型圧力容器とは、第一種圧力容器に該当する性質を持つ容器のうち、圧力・内容積・寸法などが一定の小規模な範囲に収まるものを指します。具体的には、ゲージ圧力0.1MPa以下で使用する内容積0.2m³以下の容器などが小型圧力容器に分類されます。

第一種圧力容器の要件に当てはまる性質であっても、規模が小さければ小型圧力容器として条文上区分され、製造許可や検査などの法規制のレベルが異なります。該当区分については、設備の仕様、内容積、圧力、温度、用途、適用法令により確認が必要です。

6. 第二種圧力容器との違い

第二種圧力容器は、第一種圧力容器には該当せず、ゲージ圧力0.2MPa以上の気体を内部に保有する容器のうち、内容積0.04m³以上など一定の要件に該当するものです。

第一種圧力容器が主に蒸気・熱媒・沸点以上の液体を扱うのに対し、第二種圧力容器は気体を貯留する目的のものが中心となります。圧縮空気タンクやエアレシーバーが代表的な例として挙げられます。

工場内の圧力設備を棚卸しする際には、蒸気や熱媒を扱う設備と気体を貯留する設備を分けて整理することで、法令上の区分を確認しやすくなります。

7. 高圧ガス設備との違い

高圧ガス設備は、高圧ガス保安法の規制対象となる設備です。一方で、高圧ガス設備だからといって、労働安全衛生法が関係ないというわけではありません。

高圧ガス保安法に基づく設備であっても、内部で化学反応を起こして蒸気を発生させたり、大気圧における沸点を超える温度の液体を保有したりする場合は、同時に労働安全衛生法令上の第一種圧力容器の定義にも該当することがあります。所管する法律の目的が異なるため、二つの法律の定義をそれぞれ満たすケースが存在します。

重要:高圧ガス設備だからといって、労働安全衛生法令の確認がすべて不要になるわけではない

「高圧ガス保安法の対象だから、労働安全衛生法は関係ない」という思い込みは、作業主任者の選任漏れなどの法令違反につながる可能性があります。高圧ガス設備であっても、労働安全衛生法令上の第一種圧力容器の定義に該当するかどうかは別途確認が必要です。

8. 液化窒素CEで注意すべき点

液化窒素CEや液化酸素CEなどのコールド・エバポレータは、高圧ガス保安法の規制対象になることが多い設備です。一方で、内部に大気圧における沸点を超える温度の液体を保有する設備でもあるため、労働安全衛生法令上の第一種圧力容器としての確認も必要になります。

特に、内容積が一定規模を超える場合には、第一種圧力容器取扱作業主任者の選任および氏名・職務の掲示が必要となる場合があります。ただし、労働安全衛生法令上の第一種圧力容器に該当する場合でも、労働安全衛生法施行令第6条第17号の規定により、小型圧力容器や一定の内容積以下の容器は、作業主任者の選任対象から除かれています。

重要:第一種圧力容器に該当しても、作業主任者選任の対象となる規模・用途かどうかは別途確認が必要

高圧ガス設備であっても、労働安全衛生法令上の第一種圧力容器に該当し、かつ作業主任者選任の対象となる規模・用途である場合には、第一種圧力容器取扱作業主任者の選任および氏名・職務の掲示が必要になります。該当するかどうかは、設備の仕様、内容積、圧力、温度、用途、適用法令により確認が必要です。

ボイラー則第125条の適用除外について

高圧ガス保安法等の適用を受ける第一種圧力容器は、二重規制を避けるため、ボイラー及び圧力容器安全規則第125条により、製造許可、設置届、構造検査、使用検査、落成検査、性能検査、定期自主検査などの多くの規定が適用除外となります。

誤解に注意:ボイラー則第125条は、すべての義務をなくす規定ではない

「ボイラー則第125条があるので、第一種圧力容器に関する義務はすべて不要」という理解は正確ではありません。ボイラー則第125条は、高圧ガス設備についてボイラー則上のすべての義務をなくす規定ではありません。

製造・設置・検査等に関する多くの規定を適用除外にする一方で、作業主任者の選任や氏名・職務の掲示については、別途確認が必要です。

実務上のまとめ(液化窒素CE等への適用)

  • 高圧ガス保安法の対象であることと、労働安全衛生法の対象であることは、排他的ではない
  • ボイラー則第125条で製造・設置・検査等の多くが適用除外になる場合でも、作業主任者の選任(ボイラー則第62条)・掲示(ボイラー則第66条)については別途確認が必要
  • 設備の内容積・用途・圧力等の仕様を確認し、作業主任者選任の対象規模かどうかを確認する

9. 現地調査で確認すべきポイント

工場内のコンプライアンス点検の際には、以下の4点を確認してください。

1

設備要件の特定

現場のCEタンクや反応器などの設備が、労働安全衛生法令上の第一種圧力容器に該当するかを確認します。該当する場合は、作業主任者の選任対象となる規模かどうかも確認します。設備の仕様、内容積、圧力、温度、用途、適用法令により確認が必要です。

2

適用除外の範囲の確認

高圧ガス保安法等の適用を受ける設備について、ボイラー則第125条により、製造許可、設置届、構造検査、使用検査、落成検査、性能検査、定期自主検査などのどの規定が適用除外となるかを確認します。適用除外の範囲を正確に把握し、義務が残る規定を見落とさないことが重要です。

3

作業主任者の選任と掲示

該当する場合、有資格者から第一種圧力容器取扱作業主任者を選任し、現場の見やすい場所に氏名と職務を掲示しているかを確認します。書類上の選任記録だけでなく、現場への掲示状況も確認してください。

4

資格の適正性

第一種圧力容器の種類、内容積、化学設備への該当性、高圧ガス保安法等の適用有無に応じて、ボイラー技士、普通第一種圧力容器取扱作業主任者技能講習修了者、化学設備関係第一種圧力容器取扱作業主任者技能講習修了者、特定第一種圧力容器取扱作業主任者免許を受けた者など、適切な資格要件を満たす者から選任しているかを確認します。どの資格が必要かは設備の区分・規模・用途によって異なるため、条文をもとに確認が必要です。

10. まとめ

「高圧ガス設備だから労働安全衛生法は関係ない」という思い込みは、法令違反のリスクを招きます。ボイラー則第125条によって届出や検査が適用除外となっても、設備の規模によっては作業主任者の選任・掲示義務は残ることを念頭に置く必要があります。

自工場の設備がどの法令の要件を満たし、何を求められているのかを、設備の仕様書等をもとに確認することが重要です。第一種圧力容器の定義や区分の判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署や専門家に相談することをお勧めします。

この記事のポイント

  • 第一種圧力容器の定義は、圧力の有無ではなく、加熱・反応・蒸発・高温液体保有といった用途・内部状態で判断する
  • 高圧ガス設備であることと、労働安全衛生法令上の第一種圧力容器であることは、同時に成立し得る
  • ボイラー則第125条の適用除外は製造・設置・検査等が中心であり、作業主任者の選任・掲示については別途確認が必要
  • 第一種圧力容器に該当しても、作業主任者選任の対象規模かどうかは別途確認が必要

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液化窒素CEやオートクレーブなどについて、第一種圧力容器としての作業主任者選任・掲示が必要かどうか整理できていない

高圧ガス保安法の対象設備について、労働安全衛生法令上でも何か確認が必要かどうか把握できていない

工場内の圧力設備を法令上の区分ごとに整理し、届出・検査・作業主任者の管理状況を一度点検したい

まずは現状の設備状況や管理体制の整理からご相談ください。

主な根拠法令・告示・通達

本記事で参照した主な条文・通達等は以下のとおりです。実務で判断する際は、必ず最新の原典をご確認ください。

法令

労働安全衛生法施行令(中心条文)

第1条第3号(ボイラーの定義)、第1条第4号(小型ボイラーの定義)、第1条第5号(第一種圧力容器の定義)、第1条第6号(小型圧力容器の定義)、第1条第7号(第二種圧力容器の定義)、第6条第17号(第一種圧力容器の取扱いの作業と除外される規模)

ボイラー、第一種圧力容器、小型圧力容器、第二種圧力容器の定義と、第一種圧力容器取扱作業主任者の選任対象となる作業の範囲を確認するための中心条文です。

労働安全衛生法・労働安全衛生規則(作業主任者)

労働安全衛生法第14条、労働安全衛生規則第16条、別表第一

作業主任者の選任義務と、第一種圧力容器取扱作業主任者の資格要件を確認するための条文です。

ボイラー及び圧力容器安全規則(中心条文)

第62条(第一種圧力容器取扱作業主任者の選任)、第66条(掲示等)、第125条(適用除外)

第一種圧力容器取扱作業主任者の選任、氏名・職務の掲示、高圧ガス保安法等の適用を受ける第一種圧力容器・第二種圧力容器に関する適用除外を確認するための中心条文です。

告示・通達

労働安全衛生規則及びボイラー及び圧力容器安全規則の一部を改正する省令の施行について(基発1218第1号、令和5年12月18日)

ボイラー則の改正内容を示す通達です。高圧ガス保安法等の適用を受ける第一種圧力容器の取扱い、ボイラー則第125条の適用除外との関係を確認するために参照しています。

高圧ガス保安法及び関係政省令の運用及び解釈(内規)の一部改正に伴う第一種圧力容器の取扱について(基安安発1128第1号、平成28年11月28日)

高圧ガス保安法等の適用を受ける第一種圧力容器の取扱い、作業主任者選任との関係を確認するための通達です。

業界団体・自治体資料(実務参考)

日本産業・医療ガス協会(JIMGA)CE実務保安Q&A、各自治体のコールド・エバポレータ取扱指針等

液化窒素CE、液化酸素CEなどのコールド・エバポレータに関する実務上の確認ポイント、第一種圧力容器取扱作業主任者の選任・掲示との関係を確認するための参考資料です。

e-Gov法令検索や厚生労働省ウェブサイト等で原典をご確認ください。法令の改正状況により内容が変わっている可能性があります。

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の設備・業務・作業場への法令適用を断定するものではありません。第一種圧力容器・ボイラー・高圧ガス設備等の区分の判断、作業主任者選任の要否は、対象設備の仕様、内容積、圧力、温度、用途、適用法令、所轄行政機関の判断等によって異なります。本記事の内容を実務に適用する際は、必ず原典の法令・通達を確認の上、必要に応じて所轄の労働基準監督署または専門家にご相談ください。本記事の情報を利用したことによるいかなる損害についても、クシィ・グローブ合同会社は責任を負いかねます。